オンラインで参照できる遠江国絵図 (遠江国の国絵図) のリストと詳細情報を提供しているページです。
↓一覧へ移動遠江国 (遠州) は東海道に属する国である。国立公文書館所蔵の『天保遠江国絵図』は勘定所旧蔵 (#2590188) が現存・オンライン公開されている。

国立公文書館所蔵、松平乗命旧蔵の国絵図群 (通称『日本分国絵図』) には遠江国のものが含まれる (#725317)。オンライン公開はされていない。

本図に記載されている国郡高は『正保遠江国郷帳』に整合することから『正保遠江国絵図』といえる。『正保遠江国郷帳』および『遠淡海地誌』との比較は以下のとおり。
| 郡 | 本図 | 正保遠江国郷帳 | 遠淡海地誌 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 豊田郡 | 35,086.0860石 | ※1 | 35,086.0860石 | ※2 | 35,086.0860石 | ※3 |
| 長上郡 | 22,633.2400石 | ※4 | 22,670.7200石 | 22,670.7700石 | ※5 | |
| 麁玉郡 | 1,400.7450石 | ※6 | 1,400.7450石 | 1,400.7450石 | ※7 | |
| 引佐郡 | 12,417.3800石 | ※8 | 12,417.3840石 | 12,417.3840石 | ※9 | |
| 敷知郡※10 | 36,296.9730石 | ※11 | 36,296.9730石 | 36,296.9730石 | ※12 | |
| 浜名郡 | 776.8010石 | ※13 | 776.8010石 | 776.8010石 | ※14 | |
| 磐田郡※15 | 934.2600石 | ※16 | 934.2600石 | 934.2600石 | ※17 | |
| 山名郡 | 32,252.5300石 | ※18 | 32,252.5300石 | 32,252.5300石 | ※19 | |
| 周知郡※20 | 18,847.0640石 | ※21 | 18,847.0640石 | ※22 | 18,847.0640石 | ※23 |
| 佐野郡 | 26,327.8647石 | ※24 | 26,327.8647石 | 26,327.8640石 | ※25 | |
| 城東郡※26 | 58,241.4083石 | ※27 | 58,241.4080石 | 58,241.4080石 | ※28 | |
| 榛原郡 | 35,481.6530石 | ※29 | 35,481.6530石 | ※30 | 35,481.6530石 | ※31 |
| 総計 | 280,696.0050石 | ※32 | 280,733.4900石 | ※33 | 280,733.4900石 | ※34 |
『正保遠江国郷帳』は『静岡県史 資料編9 近世1』(1991) 所収、ここではこれをもとにした『磐田市史 通史編 中巻 近世』(1991) c.38の一覧表を参照した。『遠淡海地誌』の石高は『遠淡海地誌』(1991) として翻刻された同名地誌に「古高」として載るもので、いつの時点の数値であるのか明示されていないが、『正保遠江国郷帳』とほとんど一致することから、同一時期の国郡高といえる。
上記によれば、松平乗命旧蔵と『正保遠江国郷帳』とでは長上・引佐・佐野の 3郡を除いて郡高は一致し、うち引佐郡については松平乗命旧蔵で合以下、佐野郡については『正保遠江国郷帳』で勺以下の相違に過ぎず、写本を作成した際に落としただけだろう。したがって長上郡を除いて一致しているといってよい。
一方、長上郡については十石以下が異なり、ほかと比べると差分が大きい。また単純な誤脱では生じない差異であり※35、それぞれが参照している情報源がそもそも異なる可能性を示唆している。ただし『遠淡海地誌』を合わせた 3点で数値が異なるのは本郡が唯一であって、やはりどちらかの誤りである可能性は残る。
ほかの各郡が一致することと、大きいとはいっても十石以下であること、またそもそも国絵図の内容 (描写) から本図が『正保遠江国絵図』であることは疑いない。しかしこの差異は興味深い点であり、いずれ説明できることを期待する (いまのところその材料はない)。
| ^ ※1: | 「高三万五千八拾六石八舛六合」。 |
| ^ ※2: | 石高分。永高換算値を合計した郡高は 38,343.128石。 |
| ^ ※3: | 「三万五千八拾六石八升六合」。 |
| ^ ※4: | 「高貳万二千六百卅三石貳斗四舛」。 |
| ^ ※5: | 「二万二千六百七十石七斗七升」。 |
| ^ ※6: | 「高千四百石七斗四舛五合 」。 |
| ^ ※7: | 「千四百石七斗四升五合」。 |
| ^ ※8: | 「高壱万貳千四百十七石三斗八舛 」。 |
| ^ ※9: | 「一万二千四百拾七石三斗八升四合」。 |
| ^ ※10: | 『正保遠江国郷帳』『遠淡海地誌』では「敷智郡」。 |
| ^ ※11: | 「高三万六千貳百九拾六石九斗七舛三合」。 |
| ^ ※12: | 「三万六千二百九拾六石九斗七升三合」。 |
| ^ ※13: | 「高七百七拾六石八斗壱合」。 |
| ^ ※14: | 「七百七拾六石八斗壱合」。 |
| ^ ※15: | 『遠淡海地誌』では「盤田郡」。 |
| ^ ※16: | 「高九百三拾四石貳斗六舛」。 |
| ^ ※17: | 「九百三十四石二斗六升」。 |
| ^ ※18: | 「高三万貳千貳百五拾二石五斗三舛 」。 |
| ^ ※19: | 「三万二千二百五十二石五斗三升」。 |
| ^ ※20: | 『正保遠江国郷帳』『遠淡海地誌』では「周智郡」。 |
| ^ ※21: | 「高壱万八千八百四拾七石六舛四合」。 |
| ^ ※22: | 石高分。永高換算値を合計した郡高は 21,824.144石。 |
| ^ ※23: | 「一万八千八百四十七石六升四合」。 |
| ^ ※24: | 「高貳万六千三百廿七石八斗六舛四合七夕」。 |
| ^ ※25: | 「二万六千三百二十七石八斗六升四合」。 |
| ^ ※26: | 『遠淡海地誌』では「城飼郡」。城飼郡のほうが呼称としては古い。 |
| ^ ※27: | 「高五万八千二百四拾壱石四斗八合三夕」。 |
| ^ ※28: | 「五万八千二百四十壱石四斗八合」。 |
| ^ ※29: | 「高三万五千四百八拾壱石六斗五舛三合」。 |
| ^ ※30: | 石高分。永高換算値を合計した郡高は 38,343.128石。 |
| ^ ※31: | 「三万五千四百八十壱石六斗五升三合」。 |
| ^ ※32: | 「惣髙合貳拾八万六百九十六石五合 」。 |
| ^ ※33: | 石高分。永高換算値を合計した郡高は 38,343.128石。 |
| ^ ※34: | 「合高二十八万七百三十三石四斗九升」。 |
| ^ ※35: | 強いていえば、松平乗命旧蔵の「卅」の字体は分解すれば部分的に「七」に見える。しかしこれだけではほかの差異を説明できない。 |
浜松市立中央図書館では『遠江國絵図』を所蔵・オンライン公開している。

本図は松平乗命旧蔵と郡高が一致し、描写も共通することから、やはり『正保遠江国絵図』といえる。継承関係はわからないが、同じ原本を写した同系統の写本である。
松平乗命旧蔵と比較すると、村高はすべて省略され、国境記載に不正確な箇所がある一方、村の接尾辞は省略されず、背景となる自然描写の区別が相対的に多いなど、本図の作成者は「国絵図」(地図) としての精密さや意味よりも「絵図」(絵画) としての完成度や形式に気を配っているようだ。文字も基本的にしっかりとした楷書で、仮名を含む草体は流麗な印象を受ける。なお『解説「国絵図」』では「下図ないしは控図と推定される」とされるが、控図ではあり得ず、かなり前の段階の下図 (下絵) としても粗雑過ぎる。
主だった違いをあげれば以下のとおり。
| 項目 | 松平乗命旧蔵 | 浜松市立中央図書館所蔵 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 村高 | 省略されていない | 省略されている | 『松平』が精緻 |
| 村の接尾辞 | 省略されている※1 | 省略されていない | 『浜松』が精緻 |
| 山陵の描写 | 『浜松』で描写されていても『松平』では描写されていない部分がある (掛川城※2付近など) | 『浜松』が精緻 | |
| 町・宿のオブジェクト | 方形 | 村と同じ小判形※3 | 『松平』が正確 |
| 東海道 金谷宿 | 「金谷宿」 | 「金谷村」 | 『松平』が正確 |
| 同宿東方の国境記載 | 「駿州嶋田ヘ出ル」、別に大井川に沿って「大井川」 | 「大井川」と大書 | 『松平』が正確 |
| 東海道 白須賀宿 西方の国境記載 | 「三河二川村ヘ出ル」 「三河下細谷村ヘ出ル」 | (欠) | 『松平』が正確 |
| 潮見坂 (汐見坂) の表記 | (欠) | 「塩見坂」 | 『浜松』が正確 |
| 田河内村 北方の山 | 方形オブジェクトに「クラホ𛂘山 | ほかと同様の形式で「く𛃰𛂰𛂒山」 | 古城であれば『松平』が正確、山であれば『浜松』が正確 |
| 横須賀城 北東の山 | 方形オブジェクトに「高天神」 | ほかと同様の形式で「高天神」 | |
| 天竜川上流右岸の切り立った地形 | 山陵とはやや異なる描写 | 色・形状とも山陵とは異なる描写 | 『浜松』が精緻 |
| 国高 | 記載されている | 記載されていない | 何ともいえず |
本図の大きさは東西 202cm × 230cmである。
冒頭で言及のとおり、『天保遠江国絵図』は国立公文書館に勘定所旧蔵 (#2590188) が現存・オンライン公開されている。
紅葉山文庫※1は江戸城内にあった書庫、勘定所は勘定奉行を長とする役所であり、したがって紅葉山文庫旧蔵は保存と限定的な参照目的のために納められたもの、勘定所旧蔵は実務に供されたものとなるが、紅葉山旧蔵も必要に応じて借用・参照されたようである※2。
『天保遠江国絵図』は東西 394cm × 南北 392cm、目録の奥書部分には、全国一律に天保9年(1838) の日付 (『天保9年戊戌五月』) と明楽飛騨守・田口五郎左衛門・大沢主馬の名前が記されている。天保国絵図一般については『9. 天保国絵図』を参照のこと。
| ^ ※1: | 「紅葉山文庫」はほかの各種用語と同様、近代以降の俗称・学術用語。近世は主に「御文庫」と呼ばれ、「官庫」とも呼ばれた。 |
| ^ ※2: | 『紅葉山文庫』(1980)。 |
→ 『凡例』
| 種別 | 参照可否・確定 | 名称等 | 所蔵・公開 | 備考 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 確定 | 他 | 根拠 | ||||
| 余州 | 所蔵 | #15716 | 秋田県公文書館 デジタルアーカイブ | 写 | ||
| 余州 | 筆者 | T1-49 | 岡山大学 絵図公開 データベースシステム | 写 | ||
| 余州 | 筆者 | 遠江国[東海道図] | 京都大学貴重資料 デジタルアーカイブ | 写 | ||
| 正保 | 筆者 | 松平乗命旧蔵 | 国立公文書館 デジタルアーカイブ | 写 → 参照 | ||
| 正保 | 所蔵 | 遠江國絵図 | 浜松市立中央図書館/ 浜松市文化遺産 デジタルアーカイブ | 写 → 参照 | ||
| 天保 | 所蔵 | #2590188 | 国立公文書館 デジタルアーカイブ | 正 (勘定所) → 参照 | ||
2026.03.29:
2026.02.18:
2026.02.11:
2026.01.31:
2026.01.02: