ここでは、陸奥国・出羽国の郡の変遷と、近代分置の磐城・岩代・陸前・陸中・陸奥・羽前・羽後 7国との対応関係を整理しています。あわせて中川忠英旧蔵 (通称『日本分国図』) の組み合わせについても説明しています。

概要

陸奥国と出羽国はともに領域が広い。このため両国の国絵図は「領」を単位に分割して作成された。ただし、はじめから※1分割されたのは陸奥国であり、正保国絵図は 7つの領に分けて作成された。一方、『正保出羽国絵図』は 1枚で作成されており、5つの領に分割されたのは元禄国絵図からである。

その間、いわゆる寛文印知の寛文4年(1664) を契機として、中世以来の乱れた郡の構成が全国的に見直された。陸奥国・出羽国も例外ではなく、特に陸奥国 会津領と出羽国 秋田領において大幅な再編が行われた。

その後、近代に入ると、この広大な両国は正式に分割されることになり、明治元年(1868) 末、陸奥国は磐いわ城き・岩いわ代しろ・陸りく前ぜん・陸りく中ちゅう・陸奥むつの 5国に、出羽国は羽う前ぜん・羽う後ごの 2国にそれぞれ分置された。

ここでは陸奥国・出羽国それぞれについて、この一連の変遷を 1つの表にまとめることで全体を見渡せるようにした。あわせて、現在の各県と重なるようで重ならない近代分置各国との対応関係も示す。また、古文書として収蔵・整理される過程で、近代の分置に基づく単位に組み合わせを変えられてしまった中川忠英旧蔵の国絵図群 (国立公文書館所蔵、通称『日本分国図』) について、現在の分類と本来の「領」に基づく編成についても表にまとめて示す。

注釈

陸奥国の変遷

陸奥国について、寛文印知の寛文4年(1664) を前後して再編成された郡と、国絵図の作成単位 (領)、さらに近代の分置 (分割) との対応関係を以下に示す。

陸奥国の変遷
正保国絵図 ・ 郷帳天保国絵図 ・ 郷帳近代中川忠英旧蔵
領郡国※1県※2郡
会津郡 ・ 南山 ・ 伊南 ・ 伊北会津会津郡岩いわ代しろ福島会津郡
→ 南会津郡 ・ 北会津郡※3
「南山」部分のみ、#714177 (岩代国2)
大沼郡大沼郡大沼郡
耶麻郡 ・ 猪苗代いなわしろ耶や麻ま郡耶麻郡
河沼郡 ・ 稲川郡河沼郡河沼郡
信夫郡福島信夫しのぶ郡信夫郡
伊達郡伊達郡伊達郡※4
安達郡白河 ・ 三春 ・ 二本松安達郡安達郡
安積郡安積あさか郡安積郡
岩瀬郡岩瀬郡岩瀬郡
白河郡白河郡白河郡 → 西白河郡※5
田村郡田村郡磐いわ城き田村郡#714312 (磐城国3)
石川郡石川郡石川郡
磐城 ・ 棚倉 ・ 相馬白川郡白川郡 → 東白川郡※5
高野郡#714311 (磐城国2)
菊田郡菊きく多た郡菊多郡石いわ城き郡※6
岩ケ崎郡磐いわ前さき郡磐前郡#714180 (磐城国1)
岩城郡磐いわ城き郡磐城郡
楢葉郡楢なら葉は郡楢葉郡双葉郡※6
標葉郡標しね葉は郡標葉郡#714313 (磐城国4)
行方郡行なめ方かた郡行方郡相馬郡※6
宇多郡 (南部)宇う多だ郡 (南部)宇多郡 (南部)
(北部)仙台(北部)(北部)#714316 (仙台領1)
曰理郡亘わた理り郡宮城亘理郡 (磐城国で最終的に宮城県の所属となった3郡のひとつ)#714316 (仙台領1)
刈田郡刈田かった郡刈田郡※7(同上)
伊具郡伊い具ぐ郡伊具郡※7(同上)
柴田郡柴田郡陸前柴田郡#714316 (仙台領1)
名取郡名取郡名取郡
宮城郡宮城郡宮城郡
黒川郡黒川郡黒川郡
加美郡賀か美み郡加美郡
玉造郡玉造郡玉造郡
志田郡志し田だ郡志田郡
遠田郡遠とお田だ郡遠田郡
小鹿郡牡お鹿しか郡牡鹿郡
桃生郡桃生ものう郡桃生郡
栗原郡栗原郡栗原郡#714349 (陸中国1)
登米郡登と米め郡登米郡#714178 (陸前国1)
元良郡本もと吉よし郡本吉郡
気仙郡気け仙せん郡岩手気仙郡
(陸前国で最終的に岩手県の所属となった唯一の郡)
磐井郡磐いわ井い郡陸中磐井郡
→ 東磐井郡 ・ 西磐井郡※8
#714349 (陸中国1)
伊沢郡胆い沢さわ郡胆沢郡
江刺郡江え刺さし郡江刺郡
和賀郡南部和賀郡和賀郡
→ 東和賀郡 ・ 西和賀郡
→ 和賀郡※9
#714242 (陸中国2)
稗貫郡稗ひえ貫ぬき郡稗貫郡
紫波郡志し和わ郡紫波郡
岩手郡岩手郡岩手郡
→ 南岩手郡 ・ 北岩手郡
→ 岩手郡※9
#714242 (陸中国2)
閉伊郡閉へ伊い郡閉伊郡東閉伊郡 ・ 北閉伊郡 ・ 中閉伊郡
→ 下閉伊郡※10
#714350 (陸中国3)
西閉伊郡 ・ 南閉伊郡
→ 上閉伊郡
九戸郡九戸くのへ郡九戸郡
→ 南九戸郡 ・ 北九戸郡
→ 九戸郡※11
鹿角郡鹿か角づの郡秋田鹿角郡
(陸中国で最終的に秋田県の所属となった唯一の郡)
二戸郡二戸にのへ郡陸奥岩手二戸郡
(陸奥国 3郡のうち二戸郡は岩手県の所属となった)
三戸郡三戸さんのへ郡青森三戸郡
北郡北郡北郡
→ 上北郡 ・ 下北郡※12
南部のみ、 #714351 (陸奥国1)
平賀郡 ・ 鼻和郡 ・ 田舎郡津軽津軽郡津軽郡
→ 東津軽郡 ・ 西津軽郡 ・ 南津軽郡 ・ 北津軽郡 ・ 中津軽郡※12
注釈

出羽国の変遷

出羽国について、寛文印知の寛文4年(1664) を前後して再編成された郡と国絵図の作成単位 (領)、さらに近代の分置 (分割) の関係を以下に示す。

出羽国の変遷
正保国絵図 ・ 郷帳天保国絵図 ・ 郷帳近代
領郡国※1県※2郡
秋田郡秋田秋田郡羽う後ご秋田秋田郡
→ 南秋田郡 ・ 北秋田郡※3
豊嶋郡河辺郡河辺郡
雄勝郡 雄お勝がち郡雄勝郡
山本郡 仙せん北ぼく郡仙北郡
檜山郡山本郡山本郡
平鹿郡平ひら鹿か郡平鹿郡
由利郡由ゆ利り郡由利郡
遊ゆ佐ざ郡庄内飽あく海み郡山形飽海郡
田川郡田川郡羽う前ぜん田川郡
→ 東田川郡 ・西田川郡※4
櫛くし引びき郡
最上郡新庄最も上がみ郡最上郡
村山郡 (一部)※5
村山郡 (大部分)山形村山郡村山郡
→ 東村山郡 ・ 西村山郡 ・ 南村山郡 ・ 北村山郡※4
置賜郡米沢置おき賜たま郡置賜郡
→ 東置賜郡 ・ 西置賜郡 ・ 南置賜郡※4
注釈

中川忠英旧蔵の本来の組み合わせ

国立公文書館所蔵、中川忠英旧蔵の国絵図群 (通称『日本分国図』) には、陸奥国各領のものが含まれる。国絵図は一般に巨大で扱いづらい。また、保管には複数回折りたたまなければならず、その回数が多くなって厚くなるほど折り目から傷みやすい。このため、中川忠英旧蔵の国絵図群では郡界で分割されているものが多い。郡界による分割は最良の方法とはいえないが、この場合、村のオブジェクト (小判形) を含む絵図上の情報が各分割をまたがることはない。実際の参照においても郡単位であることが多かったと思われ、ある意味、これが落としどころだったのだろう。

陸奥国各領の絵図も例外ではなく、すべて郡界で分割されている。当然ながら、これは本来、領単位でまとまっていたはずである。しかし、現在では近代の分置である磐いわ城き・岩いわ代しろ・陸りく前ぜん・陸りく中ちゅう・陸奥むつを単位とした組み合わせになってしまっている。古文書として収蔵・整理される過程によるものだろう。

中川忠英旧蔵の各分割ついて、本来は各領絵図のどの部分であったのかを、天保陸奥国の各領絵図の上に示す。記号は中川忠英旧蔵の各分割に存在するものであり、接合位置や本来の組み合わせを特定できるよう、分割部分をまたがるように与えられた印 (割印) である。

Fig.686 中川忠英旧蔵 (日本分国図) 分割・範囲
Fig.686 中川忠英旧蔵 (日本分国図) 分割・範囲
Fig.686 の詳細 (津軽領 ・ 南部領 ・ 仙台領)
本来の組み合わせ中川忠英旧蔵 (日本分国図)郡
冊次件名
津軽領現存 (存在) しない津軽郡
南部領38陸中国2 (#714242)和賀郡 ・ 稗貫郡 ・ 紫波郡 ・ 岩手郡
39陸中国3 (#714350)閉伊郡
40陸奥国1 (#714351)北郡 (南部)、北側の切断位置は郡界ではなく、接合部を示す割り印もない。事故によって折り目で切り離され、失われたと考えられる。
現存しない九戸郡 ・ 鹿角郡 ・ 二戸郡 ・ 三戸郡
仙台領35仙台領1 (#714316)宇多郡 (北部) ・ 曰理郡 ・ 刈田郡 ・ 伊具郡 ・ 柴田郡 ・ 名取郡
36陸前国1 (#714178)登米郡 ・ 元良郡 ・ 気仙郡
37陸中国1 (#714349)栗原郡 ・ 磐井郡 ・ 伊沢郡 ・ 江刺郡
現存しない宮城郡 ・ 黒川郡 ・ 加美郡 ・ 玉造郡 ・ 志田郡 ・ 遠田郡 ・ 牡鹿郡 ・ 桃生郡
Fig.687 中川忠英旧蔵 (日本分国図) 分割・範囲
Fig.687 中川忠英旧蔵 (日本分国図) 分割・範囲
Fig.687 の詳細 (福島領 ・ 会津領 ・ 白河 三春 二本松領 ・ 磐城 棚倉 相馬領)
本来の組み合わせ中川忠英旧蔵 (日本分国図)郡
冊次件名
福島領現存 (存在) しない信夫郡 ・ 伊達郡
会津領33岩代国2 (#714177)「南山」※1
32岩代国1 (#714314)会津郡 ・ 伊南 ・ 伊北 ・ 大沼郡 ・ 耶麻郡 ・ 猪苗代 ・ 河沼郡 ・ 稲川郡、および「小川庄」 ・ 「岩瀬郡之内」
34岩代国3 (#714315)
(現存しない)※2
白河 ・ 三春 ・ 二本松領30磐城国3 (#714312)田村郡
現存しない安達郡 ・ 安積郡 ・ 岩瀬郡 ・ 白河郡 ・ 石川郡 (北西部)
磐城 ・ 棚倉 ・ 相馬領28磐城国1 (#714180)岩ケ崎郡 ・ 岩城郡 ・ 楢葉郡
29磐城国2 (#714311)石川郡 (南東部) ・ 高野郡 ・ 菊田郡
31磐城国4 (#714313)標葉郡 ・ 行方郡 ・ 宇多郡 (南部)
注釈

出羽国の領

前述のとおり、出羽国は陸奥国とは異なり、正保国絵図においては一国単位で作成された。このため『正保出羽国国絵図』(出羽一国御絵図)は南北方向が 12mを超える破格の大きさとなっている。これは国立公文書館所蔵、中川忠英旧蔵の国絵図群 (通称『日本分国図』) でも同様であり、その出羽国絵図は「領」による分割は行われていない。

方針が変わるのは元禄国絵図からであり、この段階で出羽国も秋田・庄内・新庄・山形・米沢 5領に分割して作成された。この分割単位は、そのまま天保国絵図にも継承されている。『出羽一国御絵図』に各領を示せば以下のとおりである。

Fig.805 出羽国の領
Fig.805 出羽国の領

更新履歴

内容

:

  • 外観とメニュー類をリニューアルした。

:

  • 導入文を追補した。

:

  • 導入文を追加した。

:

  • 出羽国分を追加した。

:

  • 新規作成。