ここでは陸奥国と出羽国について、わかりづらい国絵図における分割単位を解説するとともに、同様にわかりづらい寛文年間(1661~1673) の郡の再編と明治期の分置、さらに廃藩置県とその後の府県再編において各国各郡はどのように変遷したのかをまとめています。さらに、その分置にともなって再整理されてしまったばかりに混乱がみられる、中川忠英旧蔵各国絵図の本来の組み合わせを解説しています。

(1) 陸奥国の変遷 (正保・天保・近代)

陸奥国について、江戸前期 (主に寛文年間(1661~1673) 前後) の郡の再編と国絵図の作成範囲 (領)、さらに明治初期における分置 (分割) の関係を示せば以下のようになる。なお陸奥国の分置については『33. 陸奥・出羽両国の分置と北海道の建置』に詳しい。

正保国絵図 ・郷帳天保国絵図・郷帳近代備考
※1※2
会津郡 ・ 南山 ・ 伊南 ・ 伊北会津会津郡いわしろ福島会津郡南会津郡 ・ 北会津郡
  • 近代: 明治12年(1879) 福島県における郡区町村編制法の施行にともなって分割。
  • 中川忠英旧蔵: #714177 (目録上の名称: 『岩代国2』)、ただし「南山」部分のみ。
大沼郡大沼郡大沼郡
耶麻郡 ・ 猪苗代いなわしろ耶麻郡
河沼郡 ・ 稲川郡河沼郡河沼郡
信夫郡福島信夫しのぶ信夫郡
伊達郡伊達郡伊達郡※3
安達郡白川 ・ 三春 ・ 二本松安達郡安達郡
安積郡安積あさか安積郡
岩瀬郡岩瀬郡岩瀬郡
白河郡白河郡白河郡西白河郡
田村郡田村郡いわ田村郡
  • 中川忠英旧蔵: #714312 (目録上の名称: 『磐城国3』)。
石川郡石川郡石川郡
磐城 ・ 棚倉 ・ 相馬白川郡白川郡東白川郡
高野郡
  • 近代: 明治12年(1879) 福島県における郡区町村編制法の施行にともなって改称。
  • 中川忠英旧蔵: #714311 (目録上の名称: 『磐城国2』)。
菊田郡きく菊多郡いわ
  • 近代: 明治29年(1896) 福島県における郡制の施行にともなって合併。
  • 中川忠英旧蔵: #714311 (目録上の名称: 『磐城国2』)。
岩ケ崎郡いわさき磐前郡
  • 近代: 同上。
  • 中川忠英旧蔵: #714180 (目録上の名称: 『磐城国1』)。
岩城郡いわ磐城郡
楢葉郡なら楢葉郡双葉郡
標葉郡しね標葉郡
  • 近代: 同上。
  • 中川忠英旧蔵: #714313 (目録上の名称: 『磐城国4』)。
行方郡なめかた行方郡相馬郡
  • 近代: 同上。
  • 中川忠英旧蔵: #714313 (目録上の名称: 『磐城国4』)。
宇多郡 (南部) (南部)宇多郡 (南部)
(北部)仙台(北部)(北部)
  • 近代: 同上。
  • 中川忠英旧蔵: #714316 (目録上の名称: 『仙台領1』)。
曰理郡わた宮城亘理郡
  • 近代: 磐城国で最終的に宮城県の所属となった3郡
  • 中川忠英旧蔵: #714316 (目録上の名称: 『仙台領1』)。
刈田郡刈田かった刈田郡※4
伊具郡伊具郡※4
柴田郡柴田郡陸前柴田郡
  • 中川忠英旧蔵: #714316 (目録上の名称: 『仙台領1』)。
名取郡名取郡名取郡
宮城郡宮城郡宮城郡
黒川郡黒川郡黒川郡
加美郡加美郡
玉造郡玉造郡玉造郡
志田郡志田郡
遠田郡とお遠田郡
小鹿郡鹿しか牡鹿郡
桃生郡桃生ものう桃生郡
栗原郡栗原郡栗原郡
  • 中川忠英旧蔵: #714349 (目録上の名称: 『陸中国1』)。
登米郡登米郡
  • 中川忠英旧蔵: #714178 (目録上の名称: 『陸前国1』)。
元良郡もとよし本吉郡
気仙郡せん岩手気仙郡
  • 近代: 陸前国で最終的に岩手県の所属となった唯一の郡。
  • 中川忠英旧蔵: #714178 (目録上の名称: 『陸前国1』)。
磐井郡いわ陸中磐井郡東磐井郡 ・ 西磐井郡
伊沢郡さわ胆沢郡
  • 中川忠英旧蔵: #714349 (目録上の名称: 『陸中国1』)
江刺郡さし江刺郡
和賀郡南部和賀郡和賀郡東和賀郡 ・ 西和賀郡和賀郡
  • 近代: 明治11年(1878) 岩手県における郡区町村編制法の施行にともなって分割されたが、明治30年(1897) 郡制の施行にともない再び統合。
稗貫郡ひえぬき稗貫郡
  • 中川忠英旧蔵: #714242 (目録上の名称: 『陸中国2』)
紫波郡紫波郡
岩手郡岩手郡岩手郡南岩手郡 ・ 北岩手郡岩手郡
  • 近代: 明治11年(1878) 岩手県における郡区町村編制法の施行にともなって分割されたが、明治30年(1897) 郡制の施行にともない再び統合。
  • 中川忠英旧蔵: #714242 (目録上の名称: 『陸中国2』)
閉伊郡閉伊郡東閉伊郡 ・ 北閉伊郡 ・ 中閉伊郡下閉伊郡
  • 近代: 明治11年(1878) 岩手県における郡区町村編制法の施行にともなって分割。
  • 近代: 明治30年(1897) 郡制の施行にともない、東北中を下に、西南を上に統合。
  • 中川忠英旧蔵: #714350 (目録上の名称: 『陸中国3』)。
西閉伊郡 ・ 南閉伊郡上閉伊郡
九戸郡九戸くのへ九戸郡南九戸郡 ・ 北九戸郡九戸郡
  • 近代: 明治11年(1878) 岩手県における郡区町村編制法の施行にともなって分割されたが、明治30年(1897) 郡制の施行にともない再び統合。
鹿角郡鹿づの秋田鹿角郡
  • 近代: 陸中国で最終的に秋田県の所属となった唯一の郡。
二戸郡二戸にのへ陸奥岩手二戸郡
  • 近代: 陸奥国 (二戸 ・ 三戸 ・ 津軽 3郡) のうち二戸郡は岩手県の所属となった。
三戸郡三戸さんのへ青森三戸郡
北郡北郡北郡上北郡 ・ 下北郡
  • 近代: 明治11年(1878) 青森県における郡区町村編制法の施行にともなって分割。
  • 中川忠英旧蔵: #714351 (目録上の名称: (近代の)『陸奥国1』)、ただし南部のみ。
平賀郡 ・ 鼻和郡 ・ 田舎郡津軽津軽郡津軽郡東津軽郡 ・ 西津軽郡 ・ 南津軽郡 ・ 北津軽郡 ・ 中津軽郡
注釈
^ ※1: 陸奥・出羽 2国の分割は明治元年(1868) 12月7日。
^ ※2: 廃藩置県後の府県再編後。
^ ※3: 当初磐城国、明治2年(1869) 12月8日付で岩代国へ編入。したがってごく短期間は磐城国として把握されていた。
^ ※4: 当初岩代国、明治2年(1869) 12月8日付で磐城国へ編入。したがってごく短期間は岩代国として把握されていた。
(2) 出羽国の変遷 (正保・天保・近代)

出羽国について、江戸前期 (主に寛文年間(1661~1673) 前後) の郡の再編と国絵図の作成範囲 (領)、さらに明治初期における分置 (分割) の関係を示せば以下のようになる。なお出羽国の分置については『33. 陸奥・出羽両国の分置と北海道の建置』に詳しい。

正保国絵図 ・郷帳天保国絵図・郷帳近代備考
※1※2
秋田郡秋田秋田郡秋田秋田郡南秋田郡 ・ 北秋田郡
豊嶋郡河辺郡河辺郡
雄勝郡 がち雄勝郡
山本郡 せんぼく仙北郡
檜山郡山本郡山本郡
平鹿郡ひら鹿平鹿郡
由利郡由利郡
庄内あく山形飽海郡
田川郡田川郡ぜん田川郡東田川郡 ・ 西田川郡
くしびき
最上郡新庄がみ最上郡
  • 大部分 (下記各村以外)。
村山郡
  • 南山・赤松・角川・堀之内・蔵岡・古口の6村。
村山郡山形村山郡村山郡東村山郡 ・ 西村山郡 ・ 南村山郡 ・ 北村山郡
置賜郡米沢おきたま置賜郡東置賜郡 ・ 西置賜郡 ・ 南置賜郡
注釈
^ ※1: 陸奥・出羽 2国の分割は明治元年(1868) 12月7日。
^ ※2: 廃藩置県後の府県再編後。
(3) 中川忠英旧蔵 陸奥国各領絵図の本来の組み合わせ

陸奥国の中川忠英旧蔵 (正保陸奥国絵図) は元禄・天保国絵図と同様、領ごとに作成されているが、それらはほかの中川忠英旧蔵と同様に分割され、さらに明治初期に分置されたいわいわしろりくぜんりくちゅう陸奥むつに基づいてまとめられてしまっている。

そこで各分割が本来の領絵図のどの部分であるのかを『天保陸奥国絵図』の各領絵図の上に示せば、以下のとおりである。記号はもとの接合位置・組み合わせがわかるように、分割部分にまたがるように与えられた印 (割印) である。

Fig.686 中川忠英旧蔵 (日本分国図) 分割・範囲
本来の組み合わせ中川忠英旧蔵 (日本分国図)
冊次件名
仙台領35仙台領1 (#714316)宇多郡 (北部) ・ 曰理郡 ・ 刈田郡 ・ 伊具郡 ・ 柴田郡 ・ 名取郡
35陸前国1 (#714178)登米郡 ・ 元良郡 ・ 気仙郡
36陸中国1 (#714349)栗原郡 ・ 磐井郡 ・ 伊沢郡 ・ 江刺郡
現存しない宮城郡 ・ 黒川郡 ・ 加美郡 ・ 玉造郡 ・ 志田郡 ・ 遠田郡 ・ 牡鹿郡 ・ 桃生郡
南部領38陸中国2 (#714242)和賀郡 ・ 稗貫郡 ・ 紫波郡 ・ 岩手郡
39陸中国3 (#714350)閉伊郡
40陸奥国1 (#714351)北郡 (南部)、北側の切断位置は郡界ではなく、接合部を示す割り印もない。事故によって折り目で切り離され、失われたと考えられる。
現存しない九戸郡 ・ 鹿角郡 ・ 二戸郡 ・ 三戸郡
津軽領現存 (存在) しない津軽郡
Fig.687 中川忠英旧蔵 (日本分国図) 分割・範囲
本来の組み合わせ中川忠英旧蔵 (日本分国図)
冊次件名
磐城 ・ 棚倉 ・ 相馬領28磐城国1 (#714180)岩ケ崎郡 ・ 岩城郡 ・ 楢葉郡
29磐城国2 (#714311)石川郡 (南東部) ・ 高野郡 ・ 菊田郡
31磐城国4 (#714313)標葉郡 ・ 行方郡 ・ 宇多郡 (南部)
白川 ・ 三春 ・ 二本松領30磐城国3 (#714312)田村郡
現存しない安達郡・安積郡・岩瀬郡・白河郡・石川郡 (北西部)
会津領33岩代国2 (#714177)「南山」※1
32岩代国1 (#714314) 会津郡 ・ 伊南 ・ 伊北 ・ 大沼郡 ・ 耶麻郡 ・ 猪苗代 ・ 河沼郡 ・ 稲川郡、および「小川庄」 ・ 「岩瀬郡之内」
34岩代国3 (#714315)
(現存しない)※2
福島領現存 (存在) しない信夫郡 ・ 伊達郡
注釈
^ ※1: 下野国 塩谷郡の一部も含む (南南東の突出部)。会津藩領と会津藩預かり幕府直轄領を範囲としているため。
^ ※2: #714314・#714315で網羅しない場合は (少なくとも中川忠英旧蔵としては) 現存しない部分が存在するという意味。
(4) 出羽国の領

『正保出羽国国絵図』は、『陸奥国出羽国絵図』とは異なり、領ごとではなく一国で仕上げられている。写本である中川忠英旧蔵も秋田県公文書館所蔵の『出羽一国御絵図』と同様、一国である。また『福井』によれば、中川忠英旧蔵に特有の分割もされていない。

一方、元禄・天保国絵図では陸奥国と同様に領ごとに作成された。『出羽一国御絵図』に元禄・天保国絵図の各領を示せば以下のとおりである。

Fig.805 出羽国の領