陸奥国と出羽国

ここでは陸奥国と出羽国の変遷について説明しています。

陸奥国と出羽国は、明治元年(1868) 12月にいわいわしろりくぜんりくちゅう陸奥むつの 5国とぜんの 2国にそれぞれ分置 (分割) されました。この 7国は、一般には磐城・岩城が福島県、陸前・陸中・陸奥がそれぞれ宮城・岩手・青森の各県、羽前・羽後がそれぞれ山形・秋田の各県に対応していると理解されます。しかし厳密にはこれは正しくありません。ここではそのわかりづらい対応関係と、あわせていわゆる寛文印知を前後して発生した郡の再編についてまとめます。

また、中川忠英旧蔵の国絵図は、本来は天保国絵図と同様に「領」を単位としていたはずですが、古文書として収蔵・整理される過程で明治元年(1868) 12月以後の分置 (分割) に基づく単位に組み合わせを変えられてしまいました。ここではその本来の組み合わせについても解説します。

なお、陸奥国と出羽国の分置についての詳細は『33. 陸奥・出羽両国の分置と北海道の建置』を参照してください。

(1) 陸奥国の変遷 (正保・天保・近代)

陸奥国について、江戸前期 (主に寛文年間(1661~1673) 前後) の郡の再編と国絵図の作成単位 (領)、さらに明治初期における分置 (分割) の関係を示せば以下のようになる。

正保※1天保※2近代中川忠英旧蔵
※3※4
会津郡 ・ 南山 ・ 伊南 ・ 伊北会津会津郡いわしろ福島会津郡
→ 南会津郡 ・ 北会津郡※5
「南山」部分のみ、#714177 (岩代国2)
大沼郡大沼郡大沼郡
耶麻郡 ・ 猪苗代いなわしろ耶麻郡
河沼郡 ・ 稲川郡河沼郡河沼郡
信夫郡福島信夫しのぶ信夫郡
伊達郡伊達郡伊達郡※6
安達郡白河 ・ 三春 ・ 二本松安達郡安達郡
安積郡安積あさか安積郡
岩瀬郡岩瀬郡岩瀬郡
白河郡白河郡白河郡 → 西白河郡※7
田村郡田村郡いわ田村郡#714312 (磐城国3)
石川郡石川郡石川郡
磐城 ・ 棚倉 ・ 相馬白川郡白川郡 → 東白川郡※7
高野郡#714311 (磐城国2)
菊田郡きく菊多郡いわ※8
岩ケ崎郡いわさき磐前郡#714180 (磐城国1)
岩城郡いわ磐城郡
楢葉郡なら楢葉郡双葉郡※8
標葉郡しね標葉郡#714313 (磐城国4)
行方郡なめかた行方郡相馬郡※8
宇多郡 (南部) (南部)宇多郡 (南部)
(北部)仙台(北部)(北部)#714316 (仙台領1)
曰理郡わた宮城亘理郡
(磐城国で最終的に宮城県の所属となった3郡のひとつ)
#714316 (仙台領1)
刈田郡刈田かった刈田郡※9(同上)
伊具郡伊具郡※9(同上)
柴田郡柴田郡陸前柴田郡#714316 (仙台領1)
名取郡名取郡名取郡
宮城郡宮城郡宮城郡
黒川郡黒川郡黒川郡
加美郡加美郡
玉造郡玉造郡玉造郡
志田郡志田郡
遠田郡とお遠田郡
小鹿郡鹿しか牡鹿郡
桃生郡桃生ものう桃生郡
栗原郡栗原郡栗原郡#714349 (陸中国1)
登米郡登米郡#714178 (陸前国1)
元良郡もとよし本吉郡
気仙郡せん岩手気仙郡
(陸前国で最終的に岩手県の所属となった唯一の郡)
磐井郡いわ陸中磐井郡
→ 東磐井郡 ・ 西磐井郡※10
#714349 (陸中国1)
伊沢郡さわ胆沢郡
江刺郡さし江刺郡
和賀郡南部和賀郡和賀郡
→ 東和賀郡 ・ 西和賀郡
→ 和賀郡※11
#714242 (陸中国2)
稗貫郡ひえぬき稗貫郡
紫波郡紫波郡
岩手郡岩手郡岩手郡
→ 南岩手郡 ・ 北岩手郡
→ 岩手郡※11
#714242 (陸中国2)
閉伊郡閉伊郡東閉伊郡 ・ 北閉伊郡 ・ 中閉伊郡
→ 下閉伊郡※12
#714350 (陸中国3)
西閉伊郡 ・ 南閉伊郡
→ 上閉伊郡
九戸郡九戸くのへ九戸郡
→ 南九戸郡 ・ 北九戸郡
→ 九戸郡※13
鹿角郡鹿づの秋田鹿角郡
(陸中国で最終的に秋田県の所属となった唯一の郡)
二戸郡二戸にのへ陸奥岩手二戸郡
(陸奥国 3郡のうち二戸郡は岩手県の所属となった)
三戸郡三戸さんのへ青森三戸郡
北郡北郡北郡
→ 上北郡 ・ 下北郡※14
南部のみ、 #714351 (陸奥国1)
平賀郡 ・ 鼻和郡 ・ 田舎郡津軽津軽郡津軽郡
→ 東津軽郡 ・ 西津軽郡 ・ 南津軽郡 ・ 北津軽郡 ・ 中津軽郡※14
注釈
^ ※1: 正保国絵図・郷帳。
^ ※2: 天保国絵図・郷帳。
^ ※3: 陸奥・出羽 2国の分割は明治元年(1868) 12月7日。
^ ※4: 廃藩置県後の府県再編後。
^ ※5: 明治12年(1879) 福島県における郡区町村編制法の施行にともなって分割された。
^ ※6: 当初磐城国、明治2年(1869) 12月8日付で岩代国へ編入。したがってごく短期間は磐城国として把握されていた。
^ ※7: 明治12年(1879) 福島県における郡区町村編制法の施行にともなって改称された。
^ ※8: 明治29年(1896) 福島県における郡制の施行にともなって合併された。
^ ※9: 当初岩代国、明治2年(1869) 12月8日付で磐城国へ編入。したがってごく短期間は岩代国として把握されていた。
^ ※10: 明治11年(1878) 宮城県における郡区町村編制法の施行にともなって分割された。
^ ※11: 明治11年(1878) 岩手県における郡区町村編制法の施行にともなって分割されたが、明治30年(1897) 郡制の施行にともない再び統合された。
^ ※12: 明治11年(1878) 岩手県における郡区町村編制法の施行にともなって東・西・中・南・北の閉伊郡に分割されたが、明治30年(1897) 郡制の施行にともない、東・北・中は下閉伊郡に、西・南は上閉伊郡に合併された。
^ ※13: 明治11年(1878) 岩手県における郡区町村編制法の施行にともなって分割されたが、明治30年(1897) 郡制の施行にともない再び統合された。
^ ※14: 明治11年(1878) 青森県における郡区町村編制法の施行にともなって分割された。
(2) 出羽国の変遷 (正保・天保・近代)

出羽国について、江戸前期 (主に寛文年間(1661~1673) 前後) の郡の再編と国絵図の作成単位 (領)、さらに明治初期における分置 (分割) の関係を示せば以下のようになる。

正保※1天保※2近代
※3※4
秋田郡秋田秋田郡秋田秋田郡
→ 南秋田郡 ・ 北秋田郡※5
豊嶋郡河辺郡河辺郡
雄勝郡 がち雄勝郡
山本郡 せんぼく仙北郡
檜山郡山本郡山本郡
平鹿郡ひら鹿平鹿郡
由利郡由利郡
庄内あく山形飽海郡
田川郡田川郡ぜん田川郡
→ 東田川郡 ・西田川郡※6
くしびき
最上郡新庄がみ最上郡
村山郡 (一部)※7
村山郡 (大部分)山形村山郡村山郡
→ 東村山郡 ・ 西村山郡 ・ 南村山郡 ・ 北村山郡※6
置賜郡米沢おきたま置賜郡
→ 東置賜郡 ・ 西置賜郡 ・ 南置賜郡※6
注釈
^ ※1: 正保国絵図・郷帳。
^ ※2: 天保国絵図・郷帳。
^ ※3: 陸奥・出羽 2国の分割は明治元年(1868) 12月7日。
^ ※4: 廃藩置県後の府県再編後。
^ ※5: 明治12年(1879) 秋田県における郡区町村編制法の施行にともなって分割された。
^ ※6: 明治11年(1878) 山形県における郡区町村編制法の施行にともなって分割された。
^ ※7: 南山・赤松・角川・堀之内・蔵岡・古口の6村。
(3) 中川忠英旧蔵 陸奥国各領絵図の本来の組み合わせ

陸奥国の中川忠英旧蔵 (正保陸奥国絵図) は元禄・天保国絵図と同様、領ごとに作成されているが、それらはほかの中川忠英旧蔵と同様に分割され、さらに明治初期に分置されたいわいわしろりくぜんりくちゅう陸奥むつに基づいてまとめられてしまっている。

そこで各分割が本来の領絵図のどの部分であるのかを『天保陸奥国絵図』の各領絵図の上に示せば、以下のとおりである。記号はもとの接合位置・組み合わせがわかるように、分割部分にまたがるように与えられた印 (割印) である。

Fig.686 中川忠英旧蔵 (日本分国図) 分割 ・ 範囲
Fig.686 中川忠英旧蔵 (日本分国図) 分割・範囲
本来の組み合わせ中川忠英旧蔵 (日本分国図)
冊次件名
津軽領現存 (存在) しない津軽郡
南部領38陸中国2 (#714242)和賀郡 ・ 稗貫郡 ・ 紫波郡 ・ 岩手郡
39陸中国3 (#714350)閉伊郡
40陸奥国1 (#714351)北郡 (南部)、北側の切断位置は郡界ではなく、接合部を示す割り印もない。事故によって折り目で切り離され、失われたと考えられる。
現存しない九戸郡 ・ 鹿角郡 ・ 二戸郡 ・ 三戸郡
仙台領35仙台領1 (#714316)宇多郡 (北部) ・ 曰理郡 ・ 刈田郡 ・ 伊具郡 ・ 柴田郡 ・ 名取郡
36陸前国1 (#714178)登米郡 ・ 元良郡 ・ 気仙郡
37陸中国1 (#714349)栗原郡 ・ 磐井郡 ・ 伊沢郡 ・ 江刺郡
現存しない宮城郡 ・ 黒川郡 ・ 加美郡 ・ 玉造郡 ・ 志田郡 ・ 遠田郡 ・ 牡鹿郡 ・ 桃生郡
Fig.687 中川忠英旧蔵 (日本分国図) 分割 ・ 範囲
Fig.687 中川忠英旧蔵 (日本分国図) 分割・範囲
本来の組み合わせ中川忠英旧蔵 (日本分国図)
冊次件名
福島領現存 (存在) しない信夫郡 ・ 伊達郡
会津領33岩代国2 (#714177)「南山」※1
32岩代国1 (#714314)会津郡 ・ 伊南 ・ 伊北 ・ 大沼郡 ・ 耶麻郡 ・ 猪苗代 ・ 河沼郡 ・ 稲川郡、および「小川庄」 ・ 「岩瀬郡之内」
34岩代国3 (#714315)
(現存しない)※2
白河 ・ 三春 ・ 二本松領30磐城国3 (#714312)田村郡
現存しない安達郡 ・ 安積郡 ・ 岩瀬郡 ・ 白河郡 ・ 石川郡 (北西部)
磐城 ・ 棚倉 ・ 相馬領28磐城国1 (#714180)岩ケ崎郡 ・ 岩城郡 ・ 楢葉郡
29磐城国2 (#714311)石川郡 (南東部) ・ 高野郡 ・ 菊田郡
31磐城国4 (#714313)標葉郡 ・ 行方郡 ・ 宇多郡 (南部)
注釈
^ ※1: 下野国 塩谷郡の一部も含む (南南東の突出部)。会津藩領と会津藩預かり幕府直轄領を範囲としているため。
^ ※2: #714314・#714315で網羅しない場合は (少なくとも中川忠英旧蔵としては) 現存しない部分が存在するという意味。
(4) 出羽国の領

『正保出羽国国絵図』は、『陸奥国出羽国絵図』とは異なり、領ごとではなく一国で仕上げられている。写本である中川忠英旧蔵も秋田県公文書館所蔵の『出羽一国御絵図』と同様、一国である。また『福井b』によれば、中川忠英旧蔵に特有の分割もされていない。

一方、元禄・天保国絵図では陸奥国と同様に領ごとに作成された。『出羽一国御絵図』に元禄・天保国絵図の各領を示せば以下のとおりである。

Fig.805 出羽国の領
Fig.805 出羽国の領

(5) 変更履歴

内容

:

  • 導入文を追補した。

:

  • 導入文を追加した。

:

  • 出羽国分を追加した。

:

  • 新規作成。