ここでは、江戸期 (江戸時代) に全国規模で作成された国絵図のうち、伊予国絵図について詳細をまとめています。一覧は末尾にあります。
(1) 概要
伊予国は五畿七道のうち南海道に属する国である。国立公文書館所蔵の『天保伊予国絵図』は紅葉山文庫旧蔵・勘定所旧蔵の両方が現存し、前者 (紅葉山文庫旧蔵) が『天保国絵図伊予国』(#763995) としてオンライン公開されている。

伊予国は寛永・正保・元禄・天保の各国絵図が揃う国のひとつであり、各時期の国絵図を系統的に検討できる。実際の面積に対して、東西南北における領域の広がりと島嶼部が存在する関係からどの国絵図も巨大である。
(2) 寛永伊予国絵図
『寛永伊予国絵図』は、江戸期 (江戸時代) に全国規模で作成されたと考えられている国絵図の 2番目、寛永年間(1624~1644) に作成された寛永国絵図のうち伊予国のものである。『寛永伊予国絵図』は愛媛県歴史文化博物館に現存し、『伊予国絵図 寛永図』として、絵図・絵巻デジタルアーカイブでオンライン公開されている。大きさは東西 179cm × 南北 183cm で※1、ほぼ正方形である。

本図の解説には「寛永図をもとに作成されたものの一つである
」「本図は巡見使に提出した当初のものではなく、その後の変化を反映させて描かれたものである可能性が高い
」とある。様式をまとめれば以下のようになる。
| 城下 | 大洲城は城および堀 (濠) を具体的に、やや大きく描写されている。宇和島城・今治城は正方形 (やや太めの枠・郡別の彩色) に城名が記載され、記号化されている。 | |
| 古城 | 「吉山古城」等、城名を背景の自然描写に記載。1箇所だけオブジェクト化されているように見えるが、これは岩礁 (島) に表記があるため。 | |
| 村 | オブジェクトは不定形の小判形または楕円、支配別の彩色。村名はその中に記載、基本的に接尾辞なし (接尾辞を除く部分が 1文字のものを中心に例外あり)・漢字表記。村高の記載はないが、原本が下図 (下絵図) または控図によるためか、写本における省略と考えられる。 | |
| 宿駅 | 区別はみられない。 | |
| 郡 | 見出し | 枠なし、郡名だけ。 |
| 境界 (郡界) | 墨線。国界にも引かれている。 | |
| 街道 | 朱線、一里塚なし、道程記載はあるがかなり少ない。本道・脇道で線幅の違いはなく、一里塚もないため区別はできない。 | |
| 航路 | あり。 | |
| 国界 (国境) | 国境 記載 | 山側は特定の村・町からその地点までの距離を記載。地点自体の地名はなく「宇和嶋ゟ十一里卅八間」や「境目江久万町ゟ七里」の形式、単に「土佐道」とあったり無記載の場合もあり。隣国側にはほぼ真円・彩色赤で村のオブジェクトがある (村名の記載は有無混在)。そのオブジェクトに近接して「土佐領」と表記することで国境記載を代替している場合もある。海側は讃岐国に接する付近の海上に「讃岐領」の記載のほか「谷国境 (谷國境)」「境目河口ゟ一里十八町」と、島嶼に「他領」と「阿波国内 (阿波國内、ママ)」の記載がある。 |
| 隣国 色別 | なし、「土佐領」「阿波国 (阿波國)」の文字だけ。 | |
| 方角記載 | あり。 | |
| 川幅記載 | あり。 | |
| 目録 | 見出しなし、支配別石高・総計 (『惣高』)・郡一覧の順。郡一覧は「十四郡」の見出しと接尾辞略の郡名だけ。 | |
| その他 | 短冊形 (枠線の太さは村と変わらないか、やや太め)・彩色黄の地名表記がある。特定の寺社・山は城と同様にデフォルメされた具体的な景観で描かれている。 | |
なお、広島県立歴史博物館所蔵には『伊予国絵図』があり、収蔵品データベースで参照できる。その解説によれば「正保の伊予国絵図の縮小図
」ということではあるものの、見る限りは本図によく似ている。同館のほかの国絵図と同様、解像度が不十分であり、詳細な検討は難しい点が惜しまれる。
注釈
(3) 日本六十余州国々切絵図 伊予国
日本六十余州国々切絵図 (余州図) は、江戸期 (江戸時代) に全国規模で作成されたと考えられている国絵図の 2番目、寛永年間(1624~1644) に作成された寛永国絵図の略図・縮図と考えられている国絵図である。余州図は五畿七道 68国のすべてが秋田県公文書館に現存し、「日本六十余州国々切絵図」の通称も同館のものによる。『日本六十余州国々切絵図 伊予国』は文字どおりに伊予国の余州図であり、『日本六十余州国々切絵図 伊予国』として秋田県公文書館デジタルアーカイブでオンライン公開され、大きさは東西 93cm × 南北 109cm である。
ほかに『伊予国[南海道図]』が京都大学 貴重資料デジタルアーカイブで公開され、大きさは東西 114cm × 南北 130cm、『〔伊予国絵図〕』(T1-101) が岡山大学 絵図公開データベースシステム で公開され、大きさは東西 115.7cm × 南北 163.9cm である。
聖心女子大学図書館には『伊予国図』が現存する。大きさは東西 94.5cm × 南北 104.5cm で、同館所蔵の国絵図に共通の形式 (村を小さな円であらわし名称をその外に書くなど) で描かれている。
(4) 正保伊予国絵図 (愛媛県歴史文化博物館所蔵)
『正保伊予国絵図』は、江戸期 (江戸時代) に全国規模で作成されたと考えられている国絵図の 3番目、正保年間(1644~1648) から慶安年間(1648~1652) にかけて作成された正保国絵図のうち伊予国のものである。『正保伊予国絵図』は愛媛県歴史文化博物館に現存し、『正保伊予国絵図』 として絵図・絵巻デジタルアーカイブでオンライン公開されている。大きさは 750cm × 748cmの正方形である。

本図の解説には「寛文期(1661~73年) に幕府に再提出した国絵図の控図として松山藩が作製したものと考えられる
」とあり、明暦の大火後に再提出されたもので、かつ控図とされる。郡の一覧から得られる国郡高 (国郡単位の石高) は『正保伊予国郷帳』※1と一致する。
注釈
(5) 正保伊予国絵図 (中川忠英旧蔵)
国立公文書館所蔵、中川忠英旧蔵の国絵図群 (通称『日本分国図』) には伊予国のものが含まれる (#714422)。本図はオンラインでは公開されていないが、『福井b』によれば、大きさは 440cm × 462cm のほぼ正方形である。また本図に記載されている国高 (国単位の石高、『高都合四拾万弐百七拾壱石八斗七升三合』) は 400,271.873石 (都合高四拾万弐百七拾壱石八斗七升参合) であり、『正保伊予国郷帳』の国高に一致することから『正保伊予国絵図』といえる。
(6) 元禄伊予国絵図
『元禄伊予国絵図』は、江戸期 (江戸時代) に全国規模で作成された国絵図の 4番目、元禄年間(1688~1704) に作成された元禄国絵図のうち伊予国のものである。『元禄伊予国絵図』は愛媛県歴史文化博物館に現存し、『元禄伊予国絵図 四枚之内一番』 『同二番』 『同三番』 『同四番』の組み合わせと、『元禄伊予国絵図 (東予・中予)』 『同 (南予)』の組み合わせが絵図・絵巻デジタルアーカイブでオンライン公開されている。

両方とも帯状に分割され、幅 (南北方向) はそれぞれ 187cm、187cm、184cm、136cm (以上、『元禄伊予国絵図 四枚之内一番』~『同四番』)、および 182cm、185cm (以上、『元禄伊予国絵図 (東予・中予)』『同 (南予)』) である。解説では「あまりにも巨大なため、使い勝手を考慮してか横に4分割して保存されている
」と推定され、天保国絵図作成時に幕府から提供された元禄国絵図の分割写本は、おおむね 54cm前後の幅であることから、直接の関連はないとみられる。『元禄土佐国絵図』も分割され、かつ幅 (南北方向) は 186cmで共通することから、両者の関係性が興味深い。
(7) 天保伊予国絵図
『天保伊予国絵図』は、江戸期に全国規模で作成された国絵図の最後、天保年間(1830~1844) に作成された天保国絵図のうち伊予国のものである。冒頭で言及したとおり、『天保伊予国絵図』は国立公文書館に紅葉山文庫旧蔵・勘定所旧蔵の両方が現存し、前者 (紅葉山文庫旧蔵) が『天保国絵図伊予国』(#763995) としてオンライン公開されている。なお、目録上「勘定所」とされるものは 2枚存在するが、本来的なものは 1枚で、残りは縮図ではないだろうか。
紅葉山文庫※1は江戸城内にあった、将軍の利用を原則とする書庫 (図書館) であり、勘定所は勘定奉行を長とする役所である。したがって紅葉山文庫旧蔵は保存と限定的な参照を目的に納められたもの、勘定所旧蔵は実務に供されたものとなるが、紅葉山文庫旧蔵も必要に応じて借用・参照されたようである※2。
『天保伊予国絵図』は大きさが東西 714cm × 南北 706cm で、目録の奥書部分には、全国一律に天保9年(1838) の日付 (『天保9年戊戌五月』) と明楽飛騨守・田口五郎左衛門・大沢主馬の名前が記されている。
注釈
(8) 一覧
(5) 更新履歴
内容
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- 『寛永伊予国絵図』の説明を整理した。
- 『天保伊予国絵図』の記事を追加した。
- 日本六十余州国々切絵図の記事を追加した。
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- 『元禄伊予国絵図』について外観を示した。
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- 導入文を追加し、概要を追補した。
- 『天保伊予国絵図』について外観を示した。
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- 「てにをは」等、文章・表現を適宜見直した。
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- 『寛永伊予国絵図』について外観を示した。
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- 構成を再整理し、概要を追加した。誤字・脱字を適宜修正した。
- 同様に一覧表の備考に記載されていた記事を外に出して、表現などわかりづらいところを適宜、見直した。
- 『正保伊予国絵図』について外観を示した。
- 『元禄伊予国絵図』の説明を見直した。
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- 新規作成。