ここでは、江戸期 (江戸時代) に全国規模で作成された国絵図のうち、出羽国米沢領絵図について詳細をまとめています。一覧は末尾にあります。
概要
出羽国は五畿七道のうち東山道に属する国である。そのうち米沢領※1を描いた国立公文書館所蔵の『天保出羽国米沢領絵図』は紅葉山文庫旧蔵が現存し、『天保国絵図出羽国米沢』(#764165) としてオンライン公開されている。

範囲は出羽国 置賜郡である。出羽国の郡の変遷と近代の分置 (分割) については『陸奥国と出羽国』を参照のこと。
注釈
正保出羽国絵図 (米沢市上杉博物館所蔵)
『正保出羽国絵図』は、江戸期 (江戸時代) に全国規模で作成されたと考えられている国絵図の 3番目、正保年間(1644~1648) から慶安年間(1648~1652) にかけて作成された正保国絵図のうち出羽国のものである。『正保出羽国絵図』は米沢市上杉博物館にも現存する。同館所蔵の国絵図については、長く詳細な情報が得られず、まとまったものでは『特別展 ザ・絵図 近世やまがたの風景』(1994)といった図録に限られた。また詳細な内容については現地開催の企画展を訪れるしかなく、それもごく一部に限られた※1。しかし、2026年 3月に『上杉文書調査報告書 第4分冊 絵図編』(2026)が公開され、これによってわかることが大幅に増えた※2。
『正保出羽国絵図』については、従来は南半分が『出羽一国御絵図』として米沢市上杉博物館に現存することが知られていた。そして本稿ではこれを、庄内藩が秋田藩から借り受けて作成されたものであり、このとき庄内藩にとっては不要な北半分は省略された、と推定していた。しかし『上杉文書調査報告書』によれば、実際には北半分も『羽後一円大絵図』として現存し、また秋田藩の『出羽一国御絵図』が写されたのではなく、幕府が貸与したものから作成された写本ということがわかった。
| 番号 | 史料名 | 内容 |
|---|---|---|
| 1936 | 羽後一円大絵図 | 元禄国絵図を作成するにあたって幕府から貸与された『正保出羽国絵図』から作成された写本。本図は北半分で、大きさは東西 543.0cm × 南北 616.6cm。 |
| 1778 | 出羽一国御絵図 | 同、南半分で、大きさは東西 537.0cm × 南北 543.5cm。裏書に元禄国絵図の作成経緯が記され、元禄14年 2月の日付がある。 |
羽後一円大絵図・出羽一国御絵図とも米沢市上杉博物館・市立米沢図書館 収蔵文化財総合データベースで、史料名または資料ID※4で検索することで、それぞれ 1,213 × 1364ピクセル (A1999-059-1936)、および 1,213 × 1,227ピクセル (資料ID: A1999-059-1778) の画像を参照できる※3。本データベースは、やや不親切なところがあり、サムネイルを 2度参照しなければ最大サイズのものを参照できないので注意が必要である。同一サイト内で新しいウィンドウをいくつも生成する点も望ましい仕様とはいえない。
両図とも『出羽一国御絵図』(秋田県公文書館所蔵) が「極彩色」といえる、非常に重厚な印象を受けるものであるのに対して、本館所蔵は来歴がはっきりしているほかの正保国絵図と変わらず、かなりあっさりしている。また『出羽一国御絵図』(秋田県公文書館所蔵) は、郡界が金泥を模したような彩色であるのに対して、本館所蔵は通常の墨線である。当然ながら写本であることも考慮に入れなければならないが、興味深い。城下の方形が郡別の彩色であるのは本図でもかわらない。余白部分 (畾紙) の目録もそのまま写されているように見え、文字の形から判断する限り、表題として「出羽一国御絵図 (出羽一國御繪圖)」と記載されている。
『正保出羽国絵図』のうち、秋田県公文書館所蔵、致道博物館所蔵、および中川忠英旧蔵についてはそれぞれを参照のこと。注釈
元禄出羽国米沢領絵図
『元禄出羽国米沢領絵図』は、江戸期 (江戸時代) に全国規模で作成された国絵図の 4番目、元禄年間(1688~1704) に作成された元禄国絵図のうち出羽国 米沢領のものである。『元禄出羽国米沢領絵図』は米沢市上杉博物館に現存し、これについても、2026年 3月に公開された『上杉文書調査報告書 第4分冊 絵図編』(2026)により、わかることが格段に増えた※1。
それによれば、#1773『御国絵図下図』・#1780『御国絵図控』・#1772『御国絵図控』・#1985『御国絵図控』の 4枚が現存し、下絵図・控図 2枚ずつである。概要をまとめれば以下のとおりである。
| 番号 | 史料名 | 内容 |
|---|---|---|
| 1773 | 御国絵図下図 | 下絵図、大きさは東西 268.6cm × 南北 295.2cm、北東端に経緯と元禄12年(1699) 6月9日が記載された付箋 (貼紙) が貼られている。 |
| 1780 | 御国絵図控 | 史料名は『御国絵図控』とあるが、内容としては下絵図で、大きさも東西 185.2cm × 南北 185.8cmと一回り小さい。 |
| 1772 | 御国絵図控 | 控図、大きさは東西 288.2cm × 南北 254.0cm、裏面貼紙に提出先 3名の名前と元禄13年(1700) 3月4日の日付が記載されている。 |
| 1985 | 御国絵図控 | 控図、大きさは東西 289.0cm × 南北 243.8cm、場所・形態は不明だが、#1772と同様に元禄13年(1700) 3月4日の日付が記載されている。 |
各絵図は、米沢市上杉博物館・市立米沢図書館 収蔵文化財総合データベースで、史料名または資料ID※3で検索することで、それぞれ 1,213 × 1,350ピクセル (A1999-059-1773)、1,230 × 1,213ピクセル (A1999-059-1780)、 1,736 × 1,514ピクセル (A1999-059-1772)、および 1,432 × 1,213ピクセル (資料ID: A1999-059-1985) の画像を参照できる※2。本データベースは、やや不親切なところがあり、サムネイルを 2度参照しなければ最大サイズのものを参照できないので注意が必要である。同一サイト内で新しいウィンドウをいくつも生成する点も望ましい仕様とはいえない。
#1773『御国絵図下図』は、形状が『正保出羽国絵図』から米沢領の部分を切り出したままで、まずはこれで提出されたものの、おそらく隣国との突き合わせなどで問題を指摘されたのだろう。隣国色別が控図とは異なっている点も興味深い。付箋の内容を読み取りたいが、解像度が足りない
#1780『御国絵図控』は、内容としては下絵図であって「幕府御目付衆の指図で色分し、幕府領を除いた」というものである。この下絵図では該当部分の地色 (本来無彩色の部分) が黄で彩色され、村・城下の記載が除かれている。ただし本図では形状は改められ、背景となる自然描写なども控図 (#1772・#1985) と同様になっている。分担範囲を明確化するためのものと思われるが、詳しくは図内付箋の内容を読み取る必要がある。
#1772『御国絵図控』と#1985『同』は控図であり、全体的に彩度が異なる。原本によるものなのか、撮影・色調整の関係なのかは色見本がないのでわからない (後者のようには感じる)。正本 (清絵図) の提出は、裏書から元禄13年(1700) 3月とわかるが、余白部分 (畾紙) にある目録の日付と作成責任者の名前は、残念ながら読み取れない。
『上杉文書調査報告書』には、国境確認のための絵図 (縁絵図・際絵図・端絵図) など元禄国絵図作成に関係する国絵図についての情報と、同様の解像度・品質の画像も含まれる。米沢市上杉博物館には現在デジタルアーカイブは存在しないが、いずれ整備され、貴重な史料が広く高解像度で公開されることが期待される。
注釈
天保出羽国米沢領絵図
『天保出羽国米沢領絵図』は、江戸期に全国規模で作成された国絵図の最後、天保年間(1830~1844) に作成された天保国絵図のうち出羽国 米沢領のものである。冒頭で言及したとおり、『天保出羽国米沢領絵図』は国立公文書館に紅葉山文庫旧蔵が現存し、『天保国絵図出羽国米沢』(#764165) としてオンライン公開されている。
紅葉山文庫※1は江戸城内にあった、将軍の利用を原則とする書庫 (図書館) であり、勘定所は勘定奉行を長とする役所である。したがって紅葉山文庫旧蔵は保存と限定的な参照を目的に納められたもの、勘定所旧蔵は実務に供されたものとなるが、紅葉山文庫旧蔵も必要に応じて借用・参照されたようである※2。
『天保出羽国米沢領絵図』は大きさが東西 299cm × 南北 271cm で、目録の奥書部分には、全国一律に天保9年(1838) の日付 (『天保9年戊戌五月』) と明楽飛騨守・田口五郎左衛門・大沢主馬の名前が記されている。
注釈
一覧
| 種別 | 解像度 | 記事 | 名称等 |
|---|---|---|---|
| 所蔵・公開 | |||
| 参照 | 日本六十余州国々切絵図 出羽国 (#15700) (出羽国全体) | ||
| 秋田県公文書館 デジタルアーカイブ 公開 | |||
| 参照 | 〔出羽国絵図〕 (T1-108) (出羽国全体) | ||
| 岡山大学 絵図公開データベースシステム 公開 | |||
| 参照 | 出羽国[中山道図] (出羽国全体) | ||
| 京都大学 貴重資料デジタルアーカイブ 公開 | |||
| 参照 | 出羽国図 (出羽国全体) | ||
| 聖心女子大学図書館 デジタルギャラリー 公開 | |||
| 参照 | 出羽一国御絵図 (出羽国全体) | ||
| 秋田県公文書館 デジタルアーカイブ 公開 | |||
| 参照 | 中川忠英旧蔵 (出羽国全体) | ||
| 国立公文書館 デジタルアーカイブ 公開 | |||
| 参照 | 羽後一円大絵図 | ||
| 米沢市上杉博物館 | |||
| 参照 | 出羽一国之絵図 (出羽国全体) | ||
| 致道博物館 所蔵 | |||
| 参照 | 御国絵図下図 | ||
| 米沢市上杉博物館 | |||
| 参照 | 紅葉山文庫旧蔵 (#764165) | ||
| 国立公文書館 デジタルアーカイブ |
変更履歴
内容
:
- 外観とメニュー類をリニューアルした。
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- 『正保出羽国絵図』の記事の一部を秋田領から移し、追補した。
- 『元禄出羽国米沢領絵図』『天保出羽国米沢領絵図』の記事を追加した。
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- 導入文を追加し、概要を追補した。
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- 構成を再整理し、概要を追加した。誤字・脱字を適宜修正した。
- 『天保出羽国米沢領絵図』について外観を示した。
- 分類を訂正: 『出羽一国御絵図』(米沢市上杉博物館所蔵、元禄 → 正保)、中川忠英旧蔵・致道博物館所蔵・酒田市文化資料館光丘文庫所蔵を追加。
:
- 新規作成。
