ここでは、江戸期 (江戸時代) に全国規模で作成された国絵図のうち、陸奥国白河・三春・二本松領絵図について詳細をまとめています。一覧は末尾にあります。
概要
陸奥国は五畿七道のうち東山道に属する国である。そのうち白河・三春・二本松領※1を描いた国立公文書館所蔵の『天保陸奥国白河・三春・二本松領絵図』は勘定所旧蔵が現存し、『天保国絵図陸奥国白河三春二本松』(#764240) としてオンライン公開されている。

範囲は陸奥国 田村郡・安達郡・安積郡・岩瀬郡・白河郡・石川郡 (旧・石川郡の北西部過半※2) の 6郡である。陸奥国の郡の変遷と近代の分置 (分割) については『陸奥国と出羽国』を参照のこと。
注釈
中川忠英旧蔵
『正保陸奥国白河・三春・二本松領絵図』は、江戸期 (江戸時代) に全国規模で作成されたと考えられている国絵図の 3番目、正保年間(1644~1648) から慶安年間(1648~1652) にかけて作成された正保国絵図のうち陸奥国 白河・三春・二本松領のものである。国立公文書館所蔵、中川忠英旧蔵の国絵図群 (通称『日本分国図』) には陸奥国 白河・三春・二本松領のものが複数に分割された形式で含まれ、これが『正保陸奥国白河・三春・二本松領絵図』と推定される。なお、本図は田村郡の部分だけが現存・オンライン公開されている (#714312)。

中川忠英旧蔵の国絵図群のうち陸奥国・出羽国については、近代初期の分置に基づいて組み替えられているため、本来の組み合わせがわかりづらい。これについては『中川忠英旧蔵の本来の組み合わせ』を参照のこと。
本図の様式は正保国絵図のものであり、また正保国絵図と確認されているほかの中川忠英旧蔵とも共通する。国境記載も隣接する『正保陸奥国磐城・棚倉・相馬領絵図』とも整合することから、本図は『正保白河・三春・二本松領絵図』と考えられる。田村郡の石高 (郡高) は郡内の見出しに 87,536.067石 (『高八万七千五百三拾六石六舛七合』) とある。しかしほかの史料から同郡高は得られないため、石高によって本図の性質を特定することはできない。
陸奥国白河二本松三春領絵図 (福島県立図書館所蔵)
福島県立図書館には『陸奥国白河二本松三春領絵図』(#1 #2
#3) が現存し、デジタルライブラリーでオンライン公開されている。なお、#1~#3は本稿で仮に番号を与えたものである。

本図は帯状に 6分割され、南北 57cmで東西方向に長い帯状の 6枚から構成される。#1~#3のそれぞれに 2つのビューアがあって、#n-1、#n-2のように表記すれば、北から順に #1-2、#3-2、#2-2、#2-1、#3-1、#1-1で、それぞれのビューア内に 1~3ページに分けられた高解像度画像が存在する。
| # | ページ | 内容 |
|---|---|---|
| #1-2 | 1 | 本体 (東西 320cm) |
| #1-2 | 2 | 右端ウラ: 福島県立図書館蔵書印、左端ウラ: 旧蔵書番号等 (裏書、以下同じ。内容略)。 |
| #3-2 | 1 | 本体 (東西 150cm) |
| #3-2 | 2 | 左端ウラ: 旧蔵書番号等。 |
| #3-2 | 3 | 包紙と思われるもの、後述。 |
| #2-2 | 1 | 本体 (東西 310cm) |
| #2-2 | 2 | 右端ウラ: 「陸奥国 白川・二本松・三春 領六巻之内 四」(貼紙、以下同じ)※1・福島県立図書館蔵書印、左端ウラ: 旧蔵書番号等。 |
| #2-1 | 1 | 本体 (東西 310cm) |
| #2-1 | 2 | 右端ウラ: 「陸奥国 白川・二本松・三春 領六巻之内 参」、左端ウラ: 旧蔵書番号等。 |
| #3-1 | 1 | 本体 (東西 180cm) |
| #3-1 | 2 | 右端ウラ: 「陸奥国 白川・二本松・三春 領六巻之内 弐」・福島県立図書館蔵書印、左端ウラ: 旧蔵書番号等。 |
| #1-1 | 1 | 本体 (東西 320cm) |
| #1-1 | 2 | 右端ウラ: 「陸奥国 白川・二本松・三春 領六巻之内 壱」、左端ウラ: 旧蔵書番号等。 |
1枚目 (#1-2) および 2枚目 (#3-2) の右端ウラに貼紙はないが、規則性から「陸奥国 白川・二本松・三春 領六巻之内 六」および「同 五」であると推定される。この 6枚は、外観からもわかるとおり交互に特徴が異なっている。つまり「壱」「参」「五」は厚く濃い和紙で、隣国色別の縁取りが広く、「弐」「四」「六」は相対的に薄く明るい和紙で、隣国色別の縁取りが狭い。
包紙と思われるもの (#3-2のビューア 3ページ目) には「陸奥 白河・石川・岩瀬・田村・安積・安達 郡御絵図六巻入」※1と書かれた両側に「此方様」が「壱」「参」「五」を持ち、「二本松様」が「弐」「四」「六」を持つと記載され、それらを合わせたのが本図らしい。「此方様」は三春か白河だろうとは想像がつくが、これらが 6分割 (6巻) 揃って福島県立図書館の所蔵になった経緯はわからない。
天保国絵図は、幕府から提供された元禄国絵図の分割写本に薄紙 (懸紙) を重ねて修正内容を記載し、提出するという方法が採用された。本図は形状からこのとき提供された元禄国絵図の分割写本に基づくものとわかるが、ほかよりもやや幅が広い。
内容に注目すると、「壱」「参」「五」(此方様持) は、村のオブジェクトに同じ形状の薄紙 (懸紙) を重ねて修正している箇所が多く、このほか国境記載等や自然描写の一部を同様に見直している形跡がある。しかし、たとえば『天保陸奥国白河・三春・二本松領郷帳』では、それぞれ「古者新町村」「古者菖蒲庭村」と付記されている田村郡 小野新町村・菖蒲谷村は「新町村」「菖蒲庭村」のままであるなど、見直しの中途であるようだ。
一方、「弐」「四」「六」(二本松様持) は、薄紙 (懸紙) による修正指示はないように見え、こちらは分割写本のままであるようだ。たとえば『天保陸奥国白河・三春・二本松領郷帳』でそれぞれ「古者山小屋村」「古者小浜新田村 (古者小濱新田村)」と付記されている安達郡 山木屋村・新田村は「山小屋村」「小浜新田村 (小濱新田村)」のままである、といった点があげられる。
また『天保陸奥国白河・三春・二本松領絵図』では、安積郡の猪苗代湖畔に、村高が個別には設定されず「○○之内」と付記された村々が相当量あるが (郷帳には含まれない)、「四」にはほとんどない。その南に連続する「参」では小判形に切った薄紙が多く貼られ、それらの村々が追加されている。
包紙と思われるものによれば、本図が作成された期間は、天保7年(1836) 10月~同 8年(1837) 秋までと、同初冬から弘化2年(1845) 1月までという。前者は天保国絵図の作成期間に含まれることから、「壱」「参」「五」(此方様持) は、『天保陸奥国白河・三春・二本松領絵図』の下絵図としてこの期間に作成されたものと考えるのが自然だろう。残る「弐」「四」「六」(二本松様持) は、後者の期間に『元禄陸奥国白河・三春・二本松領絵図』の分割写本を写したもの、といえるだろうか。この場合「此方様」を三春藩とし (『五』に三春城がある)、三春藩では何らかの理由で「弐」「四」「六」の部分が失われて「壱」「参」「五」の部分だけになってしまっため、二本松藩 (『六』に二本松城がある) から「弐」「四」「六」を借用して写して補った、という筋立てが成り立つ。もっとも、それがなぜ互い違いであるのかはわからず (偶然かもしれないが)、さらに検討は必要と思われる。
注釈
天保陸奥国白河
三春
二本松領絵図
『天保陸奥国白河・三春・二本松領領絵図』は、江戸期に全国規模で作成された国絵図の最後、天保年間(1830~1844) に作成された天保国絵図のうち陸奥国 白河・三春・二本松領領のものである。冒頭で言及したとおり、『天保陸奥国白河・三春・二本松領領絵図』は国立公文書館に勘定所旧蔵が現存し、『天保国絵図陸奥国白河三春二本松』(#764240) としてオンライン公開されている。

紅葉山文庫※1は江戸城内にあった、将軍の利用を原則とする書庫 (図書館) であり、勘定所は勘定奉行を長とする役所である。したがって紅葉山文庫旧蔵は保存と限定的な参照を目的に納められたもの、勘定所旧蔵は実務に供されたものとなるが、紅葉山文庫旧蔵も必要に応じて借用・参照されたようである※2。
『天保陸奥国白河・三春・二本松領絵図』は大きさが東西 330cm × 南北 367cm で、目録の奥書部分には、全国一律に天保9年(1838) の日付 (『天保9年戊戌五月』) と明楽飛騨守・田口五郎左衛門・大沢主馬の名前が記されている。
注釈
一覧
| 種別 | 解像度 | 記事 | 名称等 |
|---|---|---|---|
| 所蔵・公開 | |||
| 参照 | 日本六十余州国々切絵図 陸奥国 (#15701) (陸奥国全体) | ||
| 秋田県公文書館 デジタルアーカイブ 公開 | |||
| 参照 | 〔陸奥国絵図〕 (T1-102) (陸奥国全体) | ||
| 岡山大学 絵図公開 データベースシステム 公開 | |||
| 参照 | 陸奥国[中山道図] (陸奥国全体) | ||
| 京都大学 貴重資料デジタルアーカイブ 公開 | |||
| 参照 | 陸奥国図 (陸奥国全体) | ||
| 聖心女子大学図書館 デジタルギャラリー 公開 | |||
| 参照 | 中川忠英旧蔵 (#714312) | ||
| 国立公文書館 デジタルアーカイブ 公開 | |||
| 参照 | 陸奥国白河二本松三春領絵図 #1 | ||
| 福島県立図書館 デジタルライブラリー 公開 | |||
| 参照 | 勘定所旧蔵(#764240) | ||
| 国立公文書館 デジタルアーカイブ 公開 |
更新履歴
内容
:
- 外観とメニュー類をリニューアルした。
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- 『陸奥国白河二本松三春領絵図』の記事を追加し、また外観を示した。
- 『天保陸奥国白河・三春・二本松領絵図』の記事を追加した。
:
- 中川忠英旧蔵の記事が誤って磐城・棚倉・相馬領のものになっていたものを修正、あわせて追補し、また外観を示した。
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- 導入文を追加し、概要を追補した。
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- 『天保陸奥国白河・三春・二本松領絵図』について外観を示した。
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- 構成を再整理し、概要を追加した。誤字・脱字を適宜修正した。
- 同様に一覧表の備考に記載されていた記事を外に出して、表現などわかりづらいところを適宜、見直した。
- 福島県立図書館所蔵について、同館デジタルライブリー開設 (2026.01.08) にともない、URLを修正した。
:
- 新規作成。
