オンラインで参照できる備前国絵図 (備前国の国絵図) のリストと詳細情報を提供しているページです。

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(1) 概要

備前国は山陽道に属する国である。国立公文書館所蔵の『天保備前国絵図』は紅葉山文庫旧蔵・勘定所旧蔵の両方が現存し、紅葉山文庫旧蔵 (#763971) がオンライン公開されている。

Fig.898 天保備前国絵図 (国立公文書館所蔵)

備前国絵図は現存状況がきわめて良好で、これには岡山大学 池田家文庫によるところが大きく、またその絵図公開データベースシステムでは多くが高解像度でオンライン公開されている。『26.5. 備前・讃岐の国絵図』も参照。

池田文庫には『日本六十余州国々切絵図』(『余州図』) の異なる系統の写本が含まれ、摂津・尾張・播磨の 3国を除いて揃っている点でも貴重である。

(2) 慶長備前国絵図

岡山大学 池田家文庫には『〔備前国図〕』(T1-5)が現存し、絵図公開データベースシステムでオンライン公開されている。Fig.783 慶長備前国絵図 (T1-5『〔備前国図〕』・岡山大学池田家文庫所蔵)

本図は慶長年間(1596~1615) の作成と推定されている一方、解説に「江戸幕府が作成を命じた慶長の国絵図との関係は不明である」とあるように、徳川政権 (江戸幕府) の指示によって作成された一連の慶長国絵図のひとつであるかどうかはわかっていない。

大きさは東西 280.7cm × 南北 329.0cm、本図では岡山などの城下が壮観に描かれ、全体的に壮麗な印象である。村々は真円であらわされ、村名はいわゆる変体仮名を含む漢字仮名交じりで、これは『余州図』や『余州図』と共通する。また船橋市西図書館所蔵の『下総之国図』は真円であることも含め、特徴が似ていて興味深い。

(3) 日本六十余州国々切絵図

『日本六十余州国々切絵図 (余州図)』は、秋田県公文書館に 68国のすべてが現存し、秋田県公文書館デジタルアーカイブで公開されている。『日本六十余州国々切絵図』の通称も同館のものによる。『余州図』についての一般論は『6. 寛永国絵図・日本六十余州国々切絵図』を参照。

Fig.933 日本六十余州国々切絵図 備前国 (秋田県公文書館所蔵)

上に示したのは『日本六十余州国々切絵図 備前国』(#15747)で、大きさは東西 143cm × 南北 101cmである。ほかに岡山大学 絵図公開データベースシステム『〔備前国絵図〕』(#T1-61)が公開され、大きさは東西 159.5cm × 南北 113.9cm、京都大学貴重資料デジタルアーカイブ『備前国[山陽道図]』が公開され、大きさは東西 160cm × 南北 116cmである。

(4) 寛永備前国絵図

岡山大学 池田家文庫には『寛永備前国絵図』が現存し、『備前国九郡絵図』(T1-14) として絵図公開データベースシステムでオンライン公開されている。

Fig.671 寛永備前国絵図 (T1-14『備前国九郡絵図』・岡山大学池田家文庫所蔵)

本図の大きさは東西 188.5cm × 南北 193.4cm※1、寛永年間(1624~1644) の作成と推定されている。『慶長備前国絵図』と同様の色彩の鮮やかさが目を引く。郡名・郡高は短冊形、村をあらわすオブジェクトは一般的な小判形で村名は漢字表記、接尾辞 (『村』) があって村高も記載されている。朱線で示された街道には一里塚の表記があるが、道程記載はなく、また国境記載も最小限である。

ライデン大学図書館 (Universitaire Bibliotheken Leidens)では『備前国絵図 (Bizen no kuni ezu)』が現存・オンライン公開されている。

Fig.893 寛永阿波国絵図 (ライデン大学図書館 Universitaire Bibliotheken Leidens 所蔵)

一見してわかるように、本図は『備前国九郡絵図』(T1-14) と同じ系統の『寛永備前国絵図』であり、余白部分 (畾紙) に記載されている国高も一致する。しかし背景の自然描写に着目すると、本図では山陵に木々が描かれ、正保国絵図へ続く系譜が見えてくる。本図の大きさは東西 223cm × 南北 186.5cmで※2、『備前国九郡絵図』(T1-14) より一回り大きいが余白部分 (畾紙) によるものであり、備前国それ自体はほぼ変わらない。

記載内容も本図のほうが細かく、短冊内の郡名に付記された村数は村と新田に分けて記載され (『備前国九郡絵図』は合計のみ)、現在の鹿久居島に「オウゴガハナ」、大多府島に「大タブ」と記載され、後者には「是ヨリ播州室江六里」「是ヨリ牛窓江四里」の国境記載・距離記載があるが、これらは『備前国九郡絵図』では脱落している。国境記載についてはほか 2, 3箇所も該当するようだ。

このほか『備前国九郡絵図』では金泥で塗られた山として表現されている古城は、本図ではほかの寛永国絵図や『余州図』と共通のシンプルな方形で、同じく金泥で引かれた郡界も本図では標準の墨線である。「絵図」(絵画) としての完成度や形式に気を配っているように感じられる『備前国九郡絵図』に対し、本図の作成者は「国絵図」(地図) としての意味を理解し、精密に写すのに努めていたようだ。

ともに池田家文庫所蔵・ライデン大学図書館所蔵で様式が共通する本図 (『寛永備前国絵図』) および『寛永備中国絵図』の特徴をまとめると以下のようになる。なおここではライデン大学図書館所蔵を基準とし、池田家文庫所蔵で装飾にともなうと考えられる相違は省略した。

城下備前国の岡山城は、天守閣ともう一つの建物が具体的に描写されている。しかし『慶長備前国絵図』に比べれば遥かに控えめで、寺社等と同様の大きさである。「岡山居城」の表記がある。備中国の松山城 (備中松山城) も、城が具体的に描写されており、池田家文庫所蔵には「城山」の表記もある。やはり標準的な大きさである。
古城正方形 (太枠) に備前国は単に「古城所」、備中国も単に「古城」がほとんどだが、古城名が付記されているものもある。備前国は彩色なし (地色)・備中国は赤に彩色。村のオブジェクトに併記している場合があるが、半月状の太枠で囲み、村名とは区別している (おそらく備中国の庭妹 (庭瀬) 1箇所だけ)。備前国について、池田家文庫所蔵では古城名が付記されているので、ライデン大学所蔵では省略または欠落かもしれない。
オブジェクトは不定形の楕円または小判形、郡別の彩色。村名はその中に記載、接尾辞あり・漢字表記・村高の記載あり。池田家文庫所蔵では、さらに支配関係およびそれによる村高の内訳も記載されている (見る限り、および支配関係からいっておそらく備中国のみ)。ライデン大学所蔵ではその部分が不自然に空白となっている。また双方ともこれによってオブジェクトが大きく、村と村の間の空間を埋めている。
宿駅区別はみられない。
見出し短冊形・細枠・郡別の彩色、郡名・郡高・村数併記。
境界 (郡界)墨線。
街道朱線、一里塚あり、道程記載は、備前国についてはなし、備中国については余白部分 (畾紙) にまとめて記載。本道・脇道で線幅の違いはなく、一里塚はどちらもあるため区別はできない。
航路朱線、ライデン大学図書館所蔵は一部墨線だが、誤写と思われる。
国界 (国境)国境 記載備前国・山側は「備中山上村江出ル」の形式で、『大道筋備中高松通同宮内江出ル』『タケベ通作州福坂江出ル』『舟引カタハ越播州新岩村江出ル』などバリエーションが多い。一部にだけ距離の付記がある (『播磨堺ヨリ備中堺迄大道筋拾壹里』)。海側は「牛窓ヨリ播州室ノ津江舟路拾里」の形式、一部「是ヨリ播州室江六里」の形式。備中国・山側は『備後之内豊松村江出道』の形式で 「江」は句点に近い「ヘ」と混在、距離の付記は少ない。「~ヨリ」がある場合、起点が自国だけ・他国だけ・両方併記の場合が混在。海側は「笠岡ヨリ真鍋嶋マテ舩路五里」「成羽ヨリ連嶋迄道九里」「松山ヨリ倉鋪マテ道八里」
隣国 色分け不明瞭だがライデン大学図書館所蔵の備前国にある。
方角記載あり。
川幅記載あり。
目録備前国ライデン大学図書館所蔵と池田家文庫所蔵で異なる。前者は、見出し修正・上書きで『備前国』、総計 (国高) 「高都合貳拾八万貳百石」と田畑別の内訳、外数として新田高、郡数・村数・新田村数。後者は、見出し「備前国九郡絵図 (備前國九郡繪圖)」と総計 (国高)「知行髙都合弐拾八万弐百石」、および街道・一里塚・水域 (海・川)・郡界 (郡境) の凡例。
備中国見出しなし、総計 (国高) 『高合貳拾三万三千五百拾三石一斗 拾壱郡』(ライデン)・『高都合弐拾三万三千五百拾三石壱斗三舛』(池田家) からはじまる。内訳は支配関係で、郡ではない。支配関係はライデン・池田家で異なる。末尾は「已上 延宝七年戌未五月中旬写之」(ライデン)・「已上 拾壱郡」(池田家)。
その他ライデン大学図書館所蔵では、総社 (備中国総社宮) が具体的かつ大きめに描写されている (建物は 4つ)。一方、池田家文庫所蔵では一般的な記号に近いお堂が 2つ描画されている。
注釈
^ ※1: 数値が東西・南北のどちらかは本稿で判断した。
^ ※2: 『小野寺』による。数値が東西・南北のどちらかは本稿で判断した。
(5) 元禄備前国絵図

国立公文書館は、元禄国絵図も多く所蔵し、うち正本は下総・常陸・薩摩・大隅の 4国 (令制国 68国ではないものを除く)、写本は五畿 (大和・山城・河内・和泉・摂津) とその周囲である近江・丹波・播磨 の計 8国である。しかし備前国のものは含まれない。

一方、岡山大学 池田家文庫には『元禄備前国絵図』が現存し、『備前国絵図』(T1-20-1) として絵図公開データベースシステムでオンライン公開されている。

Fig.672 元禄備前国絵図 (T1-20-1『備前国絵図』・岡山大学池田家文庫所蔵)

これは石島 (井島) および周辺の漁場を巡る争論 (境論) の決着後に再提出したときの控図であり、このとき戻されたものが『備前国絵図』(T1-19-1) である。このほか正徳5年(1715) の複製『備前国絵図』(T1-15) と明和2年(1765) の複製『備前国絵図』(T1-2)、同様と思われる色彩の異なる『備前国絵図』(T1-11) が現存する。

資料番号標題内容大きさ※1
T1-19-1備前国絵図余白部分 (畾紙) の目録に元禄13年(1700) 12月(『元禄十三庚年十二月』) の日付と松平伊予守の名前が記されている。石島 (井島) および周辺の漁場を巡る争論 (境論) の決着前。東西 357.8cm × 南北 317.8cm
T1-20-1備前国絵図目録の日付・人名は同じ。争論 (境論) が決着し再提出したときの控図。東西 357.0cm × 南北 316.0cm
T1-15備前国絵図目録に正徳5年(1715) 8月 (『正徳五乙未年八月』) の日付と松平大炊頭の名前が記されている。同年に写された縮図。東西 202.6cm × 南北 167.6cm
T1-2備前国絵図目録に明和2年(1765) 11月 (『明和二乙酉年十一月』) の日付と松平内蔵頭の名前が記されている。同年に写された縮図。東西 199.8cm × 南北 163.2cm
T1-11備前国絵図同上。東西 202.4cm × 南北 164.8cm
注釈
^ ※1: 数値が東西・南北のどちらかは本稿で判断した。
(6) 天保備前国絵図

冒頭で言及のとおり、『天保備前国絵図』は国立公文書館に紅葉山文庫旧蔵・勘定所旧蔵の両方が現存し、紅葉山文庫旧蔵 (#763971) がオンライン公開されている。

紅葉山文庫※1は江戸城内にあった書庫、勘定所は勘定奉行を長とする役所であり、したがって紅葉山文庫旧蔵は保存と限定的な参照目的のために納められたもの、勘定所旧蔵は実務に供されたものとなるが、紅葉山旧蔵も必要に応じて借用・参照されたようである※2

『天保備前国絵図』は東西 334cm × 南北 334cm、目録の奥書部分には、全国一律に天保9年(1838) の日付 (『天保9年戊戌五月』) と明楽飛騨守・田口五郎左衛門・大沢主馬の名前が記されている。天保国絵図一般については『9. 天保国絵図』を参照のこと。

注釈
^ ※1: 「紅葉山文庫」はほかの各種用語と同様、近代以降の俗称・学術用語。近世は主に「御文庫」と呼ばれ、「官庫」とも呼ばれた。
^ ※2: 『紅葉山文庫』(1980)
(7) 一覧

『凡例』

種別参照可否確定名称等所蔵・公開備考
確定根拠
慶長当該国絵図であることは確定していないが (推定等)、村名の文字を明瞭に判読可能な高解像度の画像がオンライン公開されている。川村B〔備前国図〕岡山大学 絵図公開 データベースシステム参照
余州当該国絵図であることが確定した、村名の文字を明瞭に判読可能な高解像度の画像がオンライン公開されている。所蔵#15747秋田県公文書館 デジタルアーカイブ参照
余州当該国絵図であることが確定した、村名の文字を明瞭に判読可能な高解像度の画像がオンライン公開されている。筆者T1-61岡山大学 絵図公開 データベースシステム参照
余州当該国絵図であることが確定した、村名の文字を明瞭に判読可能な高解像度の画像がオンライン公開されている。筆者備前国[山陽道図]京都大学貴重資料 デジタルアーカイブ参照
寛永当該国絵図であることが確定した、村名の文字を明瞭に判読可能な高解像度の画像がオンライン公開されている。所蔵備前国九郡絵図 (T1-14)岡山大学 絵図公開 データベースシステム参照
寛永当該国絵図であることが確定した、村名の文字を明瞭に判読可能な高解像度の画像がオンライン公開されている。筆者Bizen no kuni ezu (備前国絵図) Ser. 288Universitaire Bibliotheken Leidens (ライデン大学図書館)参照
寛永当該国絵図であることは確定していない (推定等)、かつ低解像度の画像が公開されているだけで、史料としての活用は限定される。所蔵備前図之図収蔵品データベース (広島県立歴史博物館所蔵)
元禄当該国絵図であることが確定した、村名の文字を明瞭に判読可能な高解像度の画像がオンライン公開されている。所蔵備前国絵図 (T1-19-1)岡山大学 絵図公開 データベースシステム控 (再提出前)参照
元禄当該国絵図であることが確定した、村名の文字を明瞭に判読可能な高解像度の画像がオンライン公開されている。所蔵備前国絵図 (T1-20-1)岡山大学 絵図公開 データベースシステム控 (再提出後)参照
元禄当該国絵図であることが確定した、村名の文字を明瞭に判読可能な高解像度の画像がオンライン公開されている。所蔵備前国絵図 (T1-15)岡山大学 絵図公開 データベースシステム参照
元禄当該国絵図であることが確定した、村名の文字を明瞭に判読可能な高解像度の画像がオンライン公開されている。所蔵備前国絵図 (T1-2)岡山大学 絵図公開 データベースシステム参照
元禄当該国絵図であることが確定した、村名の文字を明瞭に判読可能な高解像度の画像がオンライン公開されている。所蔵備前国絵図 (T1-11)岡山大学 絵図公開 データベースシステム参照
天保当該国絵図であることが確定した、村名の文字を明瞭に判読可能な高解像度の画像がオンライン公開されている。所蔵#763971国立公文書館 デジタルアーカイブ正 (紅葉山)参照
天保当該国絵図であることが確定しているが非公開、オンラインで参照できない。所蔵#764144国立公文書館 デジタルアーカイブ正 (勘定所)参照
不明当該国絵図であることは確定していないが (推定等)、村名の文字を明瞭に判読可能な高解像度の画像がオンライン公開されている。#15746秋田県公文書館 デジタルアーカイブ 一連の『日本六十余州国々切絵図』に混入している備前国絵図。
(8) 変更履歴

2026.04.02:

2026.03.29:

2026.03.08:

2026.02.23:

2026.02.18:

2026.02.04:

2026.01.31:

2026.01.02: