オンラインで参照できる摂津国絵図 (摂津国の国絵図) のリストと詳細情報を提供しているページです。
↓一覧へ移動摂津国は五畿に属する国である。国立公文書館所蔵の『天保摂津国絵図』は勘定所旧蔵 (#764269) が現存・オンライン公開されている。

摂津・和泉・河内 3国の国界付近については『30.3. 摂津・和泉・河内の国絵図』を参照。
にしのみや デジタルアーカイブでは、西宮市立郷土資料館所蔵の『慶長十年摂津国絵図』がオンライン公開されている。

本図には、余白部分 (畾紙) にある目録 (『摂津国中高頭之目録』) の奥付に相当する部分に、慶長10年(1605) 9月の日付 (『慶長十年九月日』) が記載されていることから『慶長摂津国絵図』であることがわかる。この日付は『慶長和泉国絵図』と同一で、またやはり同じ片桐且元(『片桐東市正』) および伏屋飛騨守・水原石見守の名前が記載されている。
ただし本図のうち、東南端の淀川左岸 (東南岸) 部分はあとから書き加えられたと考えられており、実際に様式がまったく異なるほか、描写された内容が慶長10年(1605) と矛盾することや、目録に記載された注記に反することなどが指摘されている※1。
村をあらわすオブジェクトには村名だけを記載し、村高は外に併記している。街道は朱線で、一部 (太いもの) には一里塚の記載があって、正保以降の国絵図に共通する点も『慶長和泉国絵図』と同様である。寺社や城下の表現もおとなしい。ただし『慶長和泉国絵図』では、村をあらわすオブジェクトはほぼ真円で、また村名は接尾辞を省略して一部は戦国・織豊期以前に多い仮名交じり表記であるのに対し、本図では漢字表記で接尾辞も含み、これがかなり整った楷書で記載されている。写本による影響も排除できないが、すでに正保以降の国絵図と同様になっている点で印象深い。
本図の大きさは東西 249cm × 南北 225cm、目録 (『摂津国中高頭之目録』) に記載されている内容は以下のとおりである。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 見出し | 摂津國中高頭之目録 |
| 芥川郡 | 芥川郡高三万千八百九石七斗 |
| 田畑数弐千五百弐十弐町弐反弐㽗十六歩 | |
| 里数九十三村 | |
| 大田郡 | 大田郡高五万四百三十五石弐斗三升 |
| 田畑数四千八十八町九反四㽗四歩 | |
| 里数百三十五村 | |
| 豊島郡 | 豊嶋郡高三万四百五十七石三斗 |
| 田畑数弐千六百三十八町三反十三歩 | |
| 里数九十三村 | |
| 川辺郡 | 川邊郡高六万百八十四石九斗 |
| 田畑数四千九百三十一町五反一㽗十四歩 | |
| 里数百七十六村 | |
| 西成郡 | 闕郡之内 西成郡高弐万九千六百九石弐斗※2 |
| 田畑数弐千五十九町 | |
| 里数八十弐村 | |
| 能勢郡 | 能勢郡高一万弐千弐百弐十八石六斗 |
| 田畑数千三十七町一反弐㽗 | |
| 里数五十村 | |
| 有馬郡 | 有馬郡高弐万九千弐百十八石 |
| 田畑数弐千四百三十六町一反八㽗十四歩 | |
| 里数百六村 | |
| 武庫郡 | 武庫郡高一万七千三百五十七石五斗 |
| 田畑数千五百六十六町弐反八㽗八歩 | |
| 里数四十七村 | |
| 兎原郡 | 菟原郡高一万千百八十七石四斗 |
| 田畑数九百七十一町八反九㽗弐十三歩 | |
| 里数五十五村 | |
| 矢田辺郡 | 矢田邊郡高一万七千五百八十石七斗七升 |
| 田畑数千五百五十六町六反四㽗十五歩 | |
| 里数五十村 | |
| 総計 (国高) | 高都合弐十九万六拾八石六斗 |
| 里数八百八十七村 | |
| 此外 六万千八十石欠郡内東成分河内國御帳入 | |
| 田方弐拾四万弐百五十四石 | |
| 田数一万八千五百九十五町 | |
| 畑方四万九千八百拾四石六斗 | |
| 畠数五千弐百廿三町一反弐㽗 | |
| 田畑数合弐万三千八百拾八町一反弐㽗 | |
| 小物成 | 外小物成 |
| 合六百六拾八石一斗六升 山手米 | |
| 合六百四十五貫五百八十六文 葭銭 | |
| 寺社領 | 右高之内 八百三十二石七斗四升 寺社領 |
| 奥書 | 伏屋飛弾守 水原石見守 |
| 慶長十年九月日 片桐東市正改之 |
また、様式についてをまとめると以下のようになる (書き加えられた淀川左岸 (東南岸) 部分を除く)。
| 城下 | 町場とともに方形 (細枠・地色) に城名が表記され、記号化されている。 | |
| 村 | オブジェクトは小判形、郡別の彩色。村名はその中に記載、接尾辞あり・漢字表記 (一部カナ)、村高はその外に記載される。村名が記載されていないものは、その時点で原本の損傷 (虫喰いか、表面顔料の剥離) で読み取れなかったものと考えられる。また村高のないものは、その後の標準的な記法では「○○村之内」と付記される、ほかの村に包含される村と考えられる。 | |
| 宿駅 | 区別はみられない。 | |
| 郡 | 見出し | 枠なし、郡名だけ。 |
| 境界 (郡界) | なし。 | |
| 街道 | 朱線、一里塚あり (本道)、道程記載なし。本道・脇道で線幅の明確な区別があり、一里塚も本道だけにある。 | |
| 航路 | なし。 | |
| 国界 (国境) | 国境 記載 | 山側・北部はほとんどが「丹波越」、例外的に「丹波亀山越」「丹波八上越」で漠然としているが、「丹波越」の 1箇所には「但馬道」、「丹波亀山越」には「ツヽラ折」の付記がある。西部は「播磨江山〻」「赤松峠越」「播州大江谷越」「播州三木越」2箇所、「井山寺越 播州明石江山〻」「多井畑越 明石江山〻」「一谷越 播州明石江山〻道」と具体的な地名が示され、また山陽道摂津・播磨国界には「境木」とあって木が描かれている。海側は基本的に河川名ばかりで国境記載は見当たらない。 |
| 隣国 色分け | あり。 | |
| 方角記載 | あり。 | |
| 川幅記載 | なし。 | |
| 目録 | 略 (前述)。 | |
| その他 | n/a | |
『日本六十余州国々切絵図 (余州図)』は、秋田県公文書館に 68国のすべてが現存し、秋田県公文書館デジタルアーカイブで公開されている。『日本六十余州国々切絵図』の通称も同館のものによる。『余州図』についての一般論は『6. 寛永国絵図・日本六十余州国々切絵図』を参照。
秋田県公文書館デジタルアーカイブでは『日本六十余州国々切絵図 摂津国』が公開され、東西 114cm × 南北 108cm、ほかに『摂津国[畿内図]』 が京都大学貴重資料デジタルアーカイブで公開され、大きさは東西 114cm × 南北159cmである。
摂津国についてもほかと同様に岡山大学 池田家文庫に『〔摂津国絵図〕』(T1-78) が現存するが、本図だけはオンラインでは公開されていない。
国立公文書館所蔵、中川忠英旧蔵の国絵図群 (通称『日本分国図』) には摂津国のものが 4分割された形式で含まれ、そのうち1枚 (#714248、有馬郡) はオンライン公開されている。分割は中川忠英旧蔵の国絵図群に共通で、可能な限り折たたみ回数を減らしたい目的があったのだろう。またその分割の位置は基本的に郡界で、これによってある郡については 1分割だけを広げればよく、保存性を高めている。村のオブジェクトや文字情報が欠けることもない。
『福井』によれば国高は 375,478.86石 (都合高参拾七万五千四百七拾八石八斗六升)、参照可能な有馬郡の郡高は44,771.832石 (『高四万四千七百七拾壹石八斗三舛貳合』) である。
また同じく国立公文書館所蔵、松平乗命旧蔵の国絵図群 (通称『日本分国絵図』) にも摂津国のものが含まれ、現存する (#725038)。オンラインでは公開されていない。
この松平乗命旧蔵の国絵図群には、松平乗命から明治政府へ渡る前後 (明治5~6年(1872~1873))に、京都府が一式を借用して忠実に模写したものも存在し、京都府立京都学・歴彩館に現存、館古044: 国絵図という一群で管理されている。その『摂津国絵図』もオンラインでは公開されていないが、目録は国立公文書館デジタルアーカイブよりも充実し、国郡高が記載されている。
これらの数値を『正保摂津国郷帳』(慶安元年(1648)『摂津国郷帳』)※1の国郡高、および『日本輿地通志畿内部』(通称『五畿内志』) の『摂津国志』に記載された『見稲簿』の値と比較すれば以下のようになる (『見稲簿』についての考察は河内国を参照)。
| 郡 | 中川忠英旧蔵※2 松平乗命旧蔵※3 | 正保摂津国郷帳 |
|---|---|---|
| 見稲簿 | ||
| 東成郡※5 | 32,699.036石 | (省略)※4 |
| 32,699.036石 | ||
| 住吉郡 | 22,428.025石 | (省略) |
| 22,428.035石 | ||
| 西成郡 | 40,212.261石 | (省略) |
| 40,212.261石 | ||
| 島下郡 | 52,426.237石 | (省略) |
| 52,426.237石 | ||
| 島上郡 | 33,262.050石 | (省略) |
| 32,262.050石 | ||
| 能勢郡 | 12,246.174石 | (省略) |
| 10,246.174石 | ||
| 豊島郡 | 30,575.394石 | (省略) |
| 30,575.394石 | ||
| 河辺郡※6 | 61,277.465石 | 61,295.359石 |
| 61,277.465石 | ||
| 有馬郡 | 44,771.832石 | 44,771.832石 |
| 44,771.832石 | ||
| 武庫郡 | 16,216.042石 | 16,216.042石 |
| 16,216.042石 | ||
| 兎原郡※7 | 11,194.569石 | 11,194.569石 |
| 11,194.579石 | ||
| 矢田郡※8 | 18,169.775石 | 18,169.775石 |
| 18,169.775石 | ||
| 総計 | 375,478.860石 | 375,496.755石 |
| 372,178.870石 |
上に示したように、中川忠英旧蔵・松平乗命旧蔵とも、河辺 (川辺) 郡で 17.894 (17.895) 石のわずかな差異があることを除いて『正保摂津国郷帳』と一致する。確認可能な中川忠英旧蔵の有馬郡については正保国絵図の様式に従っており、また中川忠英旧蔵に含まれるほかの正保国絵図と同様であることから、中川忠英旧蔵は『正保摂津国絵図』といえ、松平乗命旧蔵も同様と推定される。
河辺郡の差異理由はわからないが、両図は『見稲簿』の国郡高と基本的に一致している。『有馬郡誌』にも川辺郡を 61,277.4石 (『高六萬壹千貳百七拾七石四斗餘』)、国高を 375,478.86石 (『高参拾七萬五千四百七拾八石八斗六升』) とする郷帳が抜粋されていることから※9、写本または詳細な時期による相違かと推定される。
なお京都府立京都学・歴彩館の松平乗命旧蔵(写) の大きさは東西 283.5cm × 南北 278.0cm※10、また目録では「正保図下図」とされている。
| ^ ※1: | 『兵庫県史 史料編 近世1』(1989) 所収、cc.300-309。 |
| ^ ※2: | 郡高は有馬郡のみ、ほかは不明である。総計 (国高) は『福井』による。 |
| ^ ※3: | 京都府立京都学・歴彩館の目録による。 |
| ^ ※4: | 収録している資料が『兵庫県史』であるため、現在の大阪府にあたる部分は省略されている。 |
| ^ ※5: | 『見稲簿』では『東生郡』。 |
| ^ ※6: | 『正保摂津国郷帳』では「川辺郡」。 |
| ^ ※7: | 『見稲簿』では「菟原郡」。 |
| ^ ※8: | 『正保摂津国郷帳』では「矢田辺郡」、『見稲簿』では「矢田部郡」。『和名類聚抄』では「八部」と書いて「やたへ (やたべ)」と読ませているが「矢田」では無理があるので、「矢田部郡」の「部」が落ちたのだろう。松平乗命旧蔵の写本自体によるのか、目録上の脱字なのかは不明。 |
| ^ ※9: | 『有馬郡誌 上』(1929) cc.45-47。「元禄調査 (元祿調査)」とあるのは単純な誤りか思い違いと考えられる (『元禄摂津国絵図』の国郡高とは明らかに異なる)。 |
| ^ ※10: | 数値が東西・南北のどちらかは本稿で判断した。 |
元禄国絵図は国立公文書館に多く現存し、下総・常陸・日向・薩摩・大隅が正本、五畿 (大和・山城・河内・和泉・摂津) とその周囲である近江・丹波・播磨が写本である (令制国 68国ではないものを除く、元禄国絵図の一般論については『8. 元禄国絵図』を参照)。

『元禄摂津国絵図』(#764271) は写本のひとつである。摂津国の場合は比較するものがないが、『元禄近江国絵図』の例から、背景の自然描写では山陵と森林の多くが省略されているとみられる。実際『天保摂津国絵図』と比較するとその数は少ない。大きさは東西 274cm × 南北 246cm、元禄15年(1702) 2月の日付 (『元禄十五壬午年二月』) と青山播磨守・永井豊熊・九鬼大和守の名前がある。
冒頭で言及のとおり、『天保摂津国絵図』は国立公文書館に勘定所旧蔵 (#764269) が現存・オンライン公開されている。
紅葉山文庫※1は江戸城内にあった書庫、勘定所は勘定奉行を長とする役所であり、したがって紅葉山文庫旧蔵は保存と限定的な参照目的のために納められたもの、勘定所旧蔵は実務に供されたものとなるが、紅葉山旧蔵も必要に応じて借用・参照されたようである※2。
『天保摂津国絵図』は東西 306cm × 南北 304cm、目録の奥書部分には、全国一律に天保9年(1838) の日付 (『天保9年戊戌五月』) と明楽飛騨守・田口五郎左衛門・大沢主馬の名前が記されている。天保国絵図一般については『9. 天保国絵図』を参照のこと。
| ^ ※1: | 「紅葉山文庫」はほかの各種用語と同様、近代以降の俗称・学術用語。近世は主に「御文庫」と呼ばれ、「官庫」とも呼ばれた。 |
| ^ ※2: | 『紅葉山文庫』(1980)。 |
→ 『凡例』
2026.04.05:
2026.03.29:
2026.03.15:
2026.03.01:
2026.02.23:
2026.02.18:
2026.01.31:
2026.01.02: